“世界一の地ビール”が茨城で生まれた理由 老舗酒蔵が造る「常陸野ネスト」の魅力 (5/5ページ)

 「うちの畑では、日本の原種麦・金子ゴールデンを収穫した後に、ソバを植えています。というのも、麦を収穫した後のやせた土でもソバは育つということで、茨城では昔から麦の裏作でソバを作っていたんですよ。また常陸牛には、ビールを造る際に出る麦のくずを食べさせて育てている。つまり、ビールにまつわるソバと牛の料理を提供しているわけです」

サンフランシスコの直営店では、常陸牛と茨城県産のそばを提供している(PRESIDENT Onlineより)

サンフランシスコの直営店では、常陸牛と茨城県産のそばを提供している(PRESIDENT Onlineより)

 サンフランシスコで当たれば、より世界基準で勝負できると木内さんは言う。このレストランは、常陸野ネストビールの世界的PRの役割をも果たしているのだ。

 さらに今年の10月には、上海にも直営店をオープンした。今後は欧米だけでなくアジア進出も目指すという。常陸野ネストビールの勢いは止まらない。

 「伝統×革新」相反する2つの掛け算が、世界の人々を魅了する

 ここ数年のクラフトビールのブームに乗じて、新規参入する醸造所も増えている。しかし木内さんは、安易な参入には否定的だ。

 「そんなに甘いもんじゃないですよ。うちの会社では日本酒は約200年、ビールは20年以上作っている。地道に生産技術の研究を積み重ねた歴史があって、今があるんです。やっぱりひとつひとついいものをきちっと作り続けていくことが、モノづくりの原点だと思います」

(PRESIDENT Onlineより)

(PRESIDENT Onlineより)

 200年続く老舗の伝統を受け継ぎながら、革新的なオリジナリティーに挑戦する木内酒造。「伝統×革新」という、一見相反するこの2つの掛け算こそが、世界の人々に愛されるゆえんなのだろう。

 (NY在住ライター/ニューヨーク女子部主催 鮫川 佳那子)(PRESIDENT Online)