
日本財託の家族信託セミナーで講師を務める横手彰太氏(右)と制度を利用した高橋千賀子さん=東京・新宿、2017年12月16日【拡大】
今回のセミナー参加者74人のうち15人から個別相談を求められた。鹿児島や福岡に住む両親の財産管理を行いたいという話もあった。
同社が家族信託の普及に積極的なのは「本業につなげるきっかけとなるフロント商品」(横手氏)と位置づけているからだ。契約件数は40に達したが、家族信託コーディネーターとして信頼関係を築くことでビジネスに発展する事例も出始めた。
実際、高橋さんのマンション売却に当たり不動産仲介業者として力を発揮。司法書士の紹介から売却まで面倒をみてくれたことに気をよくした高橋さんは「母親の預金も認知症になると凍結され引き出せなくなるので信託契約を結んだ。ワンルーム購入による資産運用も可能になる」と前向きだ。
自由に方法設計
家族信託は2007年9月の信託法改正で身近なものになった。民法で定められた遺言や成年後見制度と違って、生前から死後まで資産承継の仕方を自由に設計できる。高齢の両親の認知症対策として、子供が実家を売却して両親の介護費用を捻出できるだけでなく、財産承継先を指定できる。しかも遺言では無理な2次、3次の相続先も決められる。
認知症患者は現状の約460万人から25年には約700万人に達するといわれる。後見制度は、判断能力をなくした本人の代わりに財産を守ってくれるが、原則として本人のためにしか使えない。一方、家族信託は家族のために財産を守る方法として注目されるようになり、柔軟な対応が難しく後見人の負担も重い後見制度を補完してくれる。
この2つを「車の両輪」と顧客に紹介しているのが城南信用金庫(東京都品川区)。15年12月に始まったセミナーでは「後見制度は本人の借金を認めていないが、家族信託を組み合わせると借り入れが可能になる。双方の利点を生かす財産管理設計ができる」(お客様応援部の沢井歩氏)と訴えてきた。