
日本財託の家族信託セミナーで講師を務める横手彰太氏(右)と制度を利用した高橋千賀子さん=東京・新宿、2017年12月16日【拡大】
■「粗悪品」注意、金融機関に相談を
講師役を担ってきた吉原毅顧問(元理事長)は「お客さまによって財産もいろいろ、相続パターンもさまざまで、無限のバラエティーがある。家族の事情をよく知る地域密着型金融機関がオーダーメードで提供できる。われわれの出番だ」と強調する。その一方で「(一部の相続人が有利になるような)粗悪品も出回っている。家族信託をよく知らない税理士や司法書士もいるので金融機関に相談すること」と注意を促すことも忘れない。
利用開始から間もないため、士業といえども詳しいわけではない。日本財託の横手氏は「家族信託に精通していない士業に契約作成を依頼すると失敗する」と警鐘を鳴らす。
家族信託などの組成・管理の適正化支援に取り組む信託制度保障協会が昨年12月8日に開催した第2回シンポジウムに参加した145人のうち半数以上が士業だった。
「適正な家族信託を推進するのは金融機関と専門家の責任。レベルアップが喫緊の課題として士業に参加を呼びかけた」と話すのは、協賛した西武信用金庫(同中野区)の鈴木康介氏。資格が不要なため自称専門家も多く、契約の不備が普及を妨げていると指摘する。厳格にチェックできる専門家の育成が不可欠というわけだ。
シンポジウムで西武信金の落合寛司理事長は「豊かなシルバー人生を送るための対策が重要であり、高齢者向けサービスの一環として家族信託を強力に推進、実績も出始めた」とあいさつ。
家族信託の金銭管理などで信託管理口座を開設した顧客数は2桁に達した。賃貸併用住宅を検討している顧客から家族信託を組成した上で建築資金を融資した事例もあるという。
高齢化に伴い認知症にかかるリスクは高まるばかり。家族信託への潜在ニーズは高いだけに、サービスの認知度向上とともに、家族信託を使いこなせる専門家や金融機関の広がりが求められる。
■法定後見制度、遺言、家族信託など比較
(左から、法定後見制度/遺言/遺言信託/家族信託)
財産管理(認知症対策) △/×/×/◎
財産承継 ×/○(1代のみ)/○(1代のみ)/◎(何代でも可能)
初期費用 10万円~/0~30万円/32.4万円/100万円(契約書作成費)
ランニングコスト 月1万~5万円/※0円/遺言書保管料年6480円※遺言執行費用約200万円/※0円
※書き直しの場合は費用発生。遺言信託(某メガバンク)、家族信託は財産1億円の場合(横手彰太氏著「親が認知症になる前に知っておきたいお金の話」から)