「内部留保で雇用維持」は可能か バランス・シートで見るおカネの基本 (3/5ページ)

 企業にとって、目的もなくキャッシュを保有することは価値破壊的です。現状、株主や債権者からは平均で3~4%程度のリターンを要求されます。しかし、キャッシュを投資せずに保有していると、銀行金利はほぼゼロに等しいですから、全く価値を生みません。したがって、キャッシュを保有するほど価値を破壊するわけです。それだけの機会費用(機会費用とは、ある選択を行ったとき、ほかの選択を行った場合と比べた損失)を払ってでもキャッシュを持つには、それを上まわる投資機会が必要です。したがって、M&Aに積極的だったり、成長機会がある業界(例:医薬品、ゲーム、ITなど)では、多額の投資をするためにキャッシュを保有する傾向があります。

 また、売り上げの変動リスクが高い業界も、保有するキャッシュが多い傾向があります。たとえば、任天堂はゲーム機の「Wii(ウィー)」が好調だった後、3期連続営業赤字に陥り、売り上げはピーク時のほぼ3分の1に落ち込みました。しかし、キャッシュを大量に保有していたことで窮地を脱することができました。

任天堂はキャッシュを大量に保有していたことで窮地を脱した(時事通信フォト=写真)(PRESIDENT Onlineより)

任天堂はキャッシュを大量に保有していたことで窮地を脱した(時事通信フォト=写真)(PRESIDENT Onlineより)

 逆に、キャッシュ・マネジメントがしやすい業界は、キャッシュをあまり必要としません。たとえば、鉄道会社のキャッシュ・フローはかなり読みやすい。日銭が入ってきますし、平日/休日や天候などによって収入を予想できるためです。電気などのインフラ系も、同様に収入を予想しやすい業界といえます。

日本企業はなぜキャッシュを持ちたがるのか