クラフトボスが大ヒットした納得の理由 「ちょっと薄味」「太い容器」「クラフト感はどこ?」→全て戦略だった (3/4ページ)

サントリー食品インターナショナルでクラフトボスのブランドマネジャーを務める桜井弓子さん
サントリー食品インターナショナルでクラフトボスのブランドマネジャーを務める桜井弓子さん【拡大】

 日本では2000年代後半から、アメリカ・ポートランド発のクラフトビール文化が若者の間で注目されるようになった。2012年頃からブームに火がつき、今ではチョコやハンバーガーなどにもクラフトの波が押し寄せている。前出のフードライター中山さんによると、「クラフトに近い要素を持ったヒット食品に『明治 ザ・チョコレート』『湖池屋プライドポテト』などがあります。クラフトはおしゃれさを想起させるため、感度の高い若者に刺さりやすいのです」。

 このブームから着想を得たチームは「クラフトボスっていいかも」と話を進めていたが、ゴーサインを出す事業部長には「流行だからではなく、もう少し分析を深めて」と突き返されてしまう。

 クラフトとは一旦離れて、チームは「そもそも顧客ターゲットを誰に設定するか」というところに立ち返ることになった。ここで活きたのが、25年間変わらない「働く人の相棒」というボスのコンセプトだ。

 「若者向けの新商品でも『働く人の相棒』というコンセプトは引き継ぎたいと思っていました。それで現在の若者の働き方を考えたとき、IT従事者が多いことに目が留まったのです」(桜井さん)

 IT従事者からは、打ち合せも多くなく、一人黙々とデスクワークをこなすことに孤独を感じる人や、仕事で電子機器に囲まれているためプライベートではデジタル離れをしたいという声が目立ったという。

 「そういう方は、例えば革製品や万年筆など、職人のぬくもりやこだわりが感じられるモノを好む傾向にあることが分かったのです。これを発見し、私たちがネーミングしたかったクラフトボスと、ターゲットである働く若者のニーズが合致したのです」(桜井さん)

 人のぬくもりを表現するために、見た目にもある仕掛けがされている。

 「このボトルも決してスタイリッシュではなく、あえて太さを出して、ポテッとさせています。クラフトボスでは根詰めて働く人がホッと一息できるよう、緊張感のないデザインにこだわっています」(桜井さん)

「クラフト」らしさはどこにある?