東日本大震災7年 中小に融資不安 影落とす商工中金問題 (2/2ページ)

「東日本大震災7年」明日(11日)、震災から7年目を迎える陸前高田市の「奇跡の一本松」(左)。広田湾に面する海際には、巨大な防潮堤が築かれている=10日午後、岩手県(川村寧撮影)
「東日本大震災7年」明日(11日)、震災から7年目を迎える陸前高田市の「奇跡の一本松」(左)。広田湾に面する海際には、巨大な防潮堤が築かれている=10日午後、岩手県(川村寧撮影)【拡大】

 再建に必要な額は約25億円。返済できる自信はなかったが、そんな状況でも融資に応じてくれたのが商工中金と地元の金融機関だった。半年後には工場や冷蔵冷凍倉庫など7施設を再建。事業を再開させ、今では売り上げも震災前の約9割にまで回復した。「あのときの融資があるから今の会社がある」と語る。

 危機対応融資は財務基盤が脆弱(ぜいじゃく)な中小企業には欠かせないセーフティーネットだ。東日本大震災関連でも約3万8千件の融資が行われ、融資総額は2兆2千億円を超えている。

 しかし、商工中金が融資条件を満たさない健全な企業にも、業績関連書類を悪く改竄(かいざん)するなどして融資していたことが判明。政府の専門家検討会が立ち上げられ、4年後の完全民営化が提言された。危機対応融資については災害対応に限り存続が認められたが、「必要かどうかを検証すべきだ」ともされ今後、不要と判断される可能性もある。

 検討会のメンバーでもある菊地歯車(栃木県)の菊地義治会長(81)は、「不透明な現状に不安を抱く中小企業の経営者は多い。早く安心できるような公的な仕組みを示してもらいたい」と話している。