【木下隆之のクルマ三昧】量産モデルより先にレース仕様…トヨタ異例の開発手法に業界騒然 “新型スープラ”の持つ深い意味 (1/3ページ)

 3月6日に開幕したジュネーブ国際自動車ショーのトヨタブースは、プレスカンファレンス開幕前から高揚した雰囲気に包まれていた。というのも、2002年から生産が途絶えていたスープラのレーシングモデルがデビューすると噂されていたからである。

 日本が世界に誇るスポーツカー

 「トヨタ・スープラ」

 その車名を聞いて、郷愁を感じる読者の方もおられよう。昭和を彩った、トヨタを代表するスポーツカーである。

 初代スープラのデビューは1978年だというから今から40年も前になる。その後、2002年に生産が中止されるまで、4世代にわたって生産され続け、人気モデルであり続けた。

 特に、4世代目のA80型スープラは、モータースポーツでも活躍した。国内最高峰カテゴリーである全日本GT選手権では3回もの年間王者に輝いているし、栄光のル・マン24時間にも出場している。

 実は僕もこのマシンでGT選手権を戦っている。ドイツのニュルブルクリンク24時間にも遠征している。トヨタの代表という枠を超えた、日本が世界に誇るスポーツカーなのである。

 小首をかしげた方は相当のクルマ好き

 そう、そんなスープラが、レーシングモデルとして姿を現した。その名は「GRスープラ・レーシング・コンセプト」。ル・マン24時間の車両規則であるLM-GTEに沿ってチューニングされている。

トヨタの「GRスープラ・レーシング・コンセプト」

トヨタの「GRスープラ・レーシング・コンセプト」

 と、ここで「何かおかしいぞ」と小首をかしげた方は相当のクルマ好きか業界通であろう。そもそも新型スープラは、まだデビューしていない。発表もされていない。だというのに、先にレーシングマシンが姿を現したのである。違和感の元はそれだ。ベース車両がないのに改造車両が生まれたという逆転現象である。

開発責任者の興味深いことば