都市型における牛丼店の戦略
東京チカラめしは繁華街を中心に出店していた。一般的に、繁華街の小型牛丼店はランチなどのピークタイムにおける客数が店舗全体の売り上げを大きく左右する。店舗の業績を分析する指標としては「客席回転率=客数÷客席数」がある。繁華街は家賃が高いため、店舗面積を広げることが難しく、客数回転率が重要になる。
東京チカラめしの焼き牛丼には「焼く」というオペレーションがあり、すき家や吉野家のように「よそう」だけの店舗と比べて提供時間が長くなる。つまり、ピークタイムに客数が稼げないのだ。
繁華街の牛丼店で食事をする客は「早い」「安い」「うまい」を求めている。提供時間の遅れは客のニーズに合っていなかった。確かに、焼き牛丼は「うまい」の面で他社より有利だったかもしれない。しかし、「早い」を犠牲にしたことのマイナスが大きかった。
オペレーションで差が出た
大手3社に戦いを挑んだことで、東京チカラめしは非効率なオペレーションを露呈させることになる。店舗の急拡大に人材育成が追い付かず、客からは「提供が遅い」「店舗が不衛生だ」という声があがった。
大手牛丼チェーンは店舗のオペレーションが高度に発達している。大手3社には日本語に不慣れな外国人店員でも店舗を効率的に運営できるノウハウがある。前述した通り、牛丼業界は資本力がある企業によって寡占化が進んでいる業界だ。資本力を背景に高度な店舗ノウハウを蓄積しており、力の差は歴然だった。