パワーに優れる油圧には油漏れのリスクがつきまとう。肉についたら廃棄せざるを得ず食品加工会社にとっては致命的だ。水圧なら万が一漏れても動力源が水道水なので丸洗いできる。食品衛生管理の手続きを定めた国際基準「HACCP」対応が食品関連企業に欠かせないことも追い風だ。
試行錯誤しながら、数年前からADS機を展示するようになり、販売体制も整備。顧客に提供したモニター機も問題ないため本格展開に移行する。食肉加工業界は実績ができてから口コミで広がっていくパターンが多いといわれる中、今秋にも大手企業に1号機を納入する。開発から10年目での商機到来だ。
問題は価格だが、渡辺氏は「開発コストを価格に乗せない。付加価値だけ反映することで(油圧機の)1.5倍に抑えた」という。まずは水圧の良さを知ってもらうためで、「水圧への流れが出てくるはず。今後の展開が楽しみ」と目を細める。
防水設備も開発
同社と二人三脚で製品開発に取り組んできたのが油圧機器最大手のKYBだ。環境に優しい水圧は食品機械に求められる安全・安心を実現できるとラブコールを送り、08年にADS搭載機の共同開発にこぎ着けた。
KYBは当時、新しい事業の柱探しに奔走、さまざまなテーマに手を広げる中で選ばれたのが水圧だった。絞り込みを任された太田晶久理事・技術本部事業開発推進部部長は「油圧のKYBにとって流体は親しみ深く、コア技術を生かせる。ものにできると判断した」という。