【ビジネス解読】「腕時計界のユニクロ」寡占市場に風穴、“第4の日本ブランド”Knot (2/4ページ)

Knotの東京・吉祥寺の店舗。腕時計の本体50種類以上、ベルト90種類以上が並ぶ
Knotの東京・吉祥寺の店舗。腕時計の本体50種類以上、ベルト90種類以上が並ぶ【拡大】

  • Knotの東京・吉祥寺の店舗。腕時計の本体50種類以上、ベルト90種類以上が並ぶ
  • Knotは日本製のムーブメントを日本で組み立てる「日本製」にこだわっている=東京・吉祥寺
  • 東京・吉祥寺のKnotの店舗。来店客は腕時計本体とベルトを自由な組み合わせで試すことができる
  • 東京・吉祥寺のKnotの店舗。来店客は腕時計本体とベルトを自由な組み合わせで試すことができる
  • 「腕時計界のユニクロ」として注目を集めるKnotの遠藤弘満社長

 メイド・イン・ジャパンの腕時計を手頃な価格で提供できる理由はシンプルな流通モデルだ。腕時計業界では、部品メーカーから組立工場を経て小売店に商品が並ぶまで数多くの中間業者が介在し、コストがかさむのが一般的。これに対し、ノットはデザインから製造、販売までを一貫して手掛けるSPA(製造小売り)方式で大手と同様の製品をより安く売ることができる。

 「腕時計業界に関わる人間なら誰でも思いつくビジネスモデルです」

 ノットの創業者、遠藤弘満社長(43)はこう話す。

 しかし、そのありふれたアイデアは同時に「実現不可能」ともされてきた。日本の腕時計業界は大手による系列化が進み、日本製のムーブメントを系列外の新規参入企業が仕入れることは困難。また組立工場の間でも、大手以外の製品を手掛けることはタブーとされてきたからだ。

 遠藤氏が“不可能”に挑んだのは挫折がきっかけだった。24年、それまで展開してきたデンマークの腕時計ブランド「SKAGEN(スカーゲン)」の輸入販売の権利を突如として失ったのだ。スカーゲンが米国企業に買収され、経営方針が変わったことが理由だった。

 この数カ月前、遠藤氏は約10年にわたるスカーゲンの販売実績が評価され、デンマーク王室から名誉勲章を授与されていた。皇太子も参加した式典では祝福の拍手につつまれ、感謝の言葉を何度もかけられた。事業は順調なはずだったが…。

 「でもこの時すでに買収の話が決まっていた。販売権を失ったときは、だれも信じられないという心境になった」(遠藤氏)

理不尽な形の損失、諦めない力に