「シカ踏切」が絶大な効果、逆転の発想が生んだ近鉄の接触事故対策とは (2/4ページ)


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  • シカが線路を横断した状況を記した「鹿カルテ」(近鉄提供)
  • シカが嫌がる超音波を発するU-SONIC=奈良県宇陀市(近鉄大阪線・榛原-室生口大野間)
  • シカが線路を横断する様子(近鉄提供)
  • 「シカ踏切」の仕組み。線路沿いに柵を巡らせ、柵の隙間は必要に応じ超音波でシカの侵入を防ぐ(近鉄提供)

 野生動物との接触事故があれば、乗客の安全に気を配ることはもちろん、ダイヤの乱れや車両の損壊、死骸の処理、職員の負担などで鉄道会社は相当な痛手を被る。山間部などの路線が多い近鉄では、野生動物との接触事故は毎年200件以上にも上るというから深刻だ。

 事故件数は平成27年が288件で、ここ10年で約7倍に増えているという。特にシカの場合、天敵のニホンオオカミが絶滅したことに加え、狩猟人口の減少で捕獲数が減り、生息数は年々増加しているとみられる。

あの手この手も効果なし

 接触事故を防ぐため、これまでもさまざまな対策をとってきた。19~22年には発光ダイオード(LED)の光を照射し、野生動物に危険を知らせる装置を設置。24~26年には線路沿いに張り巡らせた柵の上部に獣害防止ロープを設けたが、いずれも効果はなかった。

 担当者は「ロープはシカの角が引っかかって線路に侵入できないと考えたが、ロープとロープ、ロープと柵の間を飛び越えるようでほとんど効果がなかった。相手は動物で、対策には苦労した」(担当者)という。

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