【高論卓説】トヨタが取り組む「コネクティッド」 サービス進化させ、顧客接点維持の武器 (2/2ページ)

トークショーをする豊田章男社長(左から2人目)と友山茂樹副社長(右)
トークショーをする豊田章男社長(左から2人目)と友山茂樹副社長(右)【拡大】

 第2に、コネクティッドの基盤が、TPSと顧客接点の維持に置かれていることだ。生産から保有というクルマのバリューチェーンの最も後工程に存在する顧客情報を、前工程に位置する販売・生産・開発へフィードバックしていこうとする。まさにTPSの経営思想そのものである。クルマのバリューチェーンビジネスを自前のコネクティッド・プラットフォームに残し、顧客との接点を守ろうとする。マーケットプレイスのような開放された取引市場へ顧客との接点を奪われたくない思いが伝わる。

 自動車産業は、(1)デジタル化(2)人工知能(AI)化(3)電動化-の3つの技術革新を迎えた。この先には、自動運転技術があり、コネクティッドの世界が広がり、電動化されたシェアリングの行動様式が広がるモビリティーサービスが展開されていく。

 クルマのコネクティッドはスマートフォンと連携すれば簡単に実現できる。しかし、車載センサーから集まるデータのゲートウエーは閉ざしており、走行データを基に作られるテレマティクス保険、メーデーシステム、修理提案のようなサービスは可能ではない。

 しかし、AIをベースにした言語認識ではすさまじい技術革新が起こり始めている。コネクティッドサービスのゲームチェンジャーとなりうることだ。スマホ連携のコネクティッドサービスがストレスフリーの言語認識を持ったAIアシスタントとなってしまえば、トヨタと顧客との接点は奪われかねない。車両データのゲートウエーも情報通信会社によってこじ開けられる可能性もある。顧客接点、車両データを手放すことは自動車産業の終わりにもつながりかねない。そのような危機意識と戦う覚悟がトヨタコネクティッド戦略にはあるだろう。

             ◇

【プロフィル】中西孝樹

 なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に「トヨタ対VW」など。