【高論卓説】「ディオ真備店」の有言実行 大惨事の修羅場で企業理念を実践 (2/3ページ)

浸水被害を乗り越え、14日に営業を再開したスーパー「ディオ真備店」=15日午後、岡山県倉敷市(小笠原僚也撮影)
浸水被害を乗り越え、14日に営業を再開したスーパー「ディオ真備店」=15日午後、岡山県倉敷市(小笠原僚也撮影)【拡大】

 奇跡の復活と呼ばれるドラマが始まったのはこの瞬間からだった。総勢200人の大部隊が悪臭のするごみの山と闘った。日中は35度を超える炎天下でほぼ手作業で腐敗した商品など全てを2日間で店内から除去した。

 次の日、水も電気も正常に戻り清掃と洗浄が始まった。ガラーンとした広い店内の隅々まで2日間かけて丁寧に洗浄した。特に食品を扱う立場上衛生面からも洗浄は重要だった。店内洗浄後、さらに2日かけて商品を搬入した。在庫も全て失ったため商品は3000点しかそろわなかったが、仕入れ先が優先的に緊急必要商品を回してくれた。とりあえず、おにぎりしか食べていないであろう地域の人々のために弁当、総菜、揚げ物を大量に用意した。新鮮な果物や水、トイレットペーパーも山積にした。

 14日の朝、近隣の人々はディオ真備店にアドバルーンが上がっているのを見て驚いた。赤いアドバルーンには「こおり・トイレあります」、青いアドバルーンには「がんばろう・まび」のメッセージが掲げられていた。数日間、鬼のように働いた社員は空を見上げて涙ぐんだ。

 朝9時、道路にはまだがれきとヘドロがあふれていたが、ディオ真備店は何事もなかったように開店し客を迎えた。ヘドロの撤去作業を開始以来わずか6日目の朝だった。続々と笑顔の客がピッカピカの店内に入ってきた。寺田店長も本社役員とともに入り口で客を迎えた。

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