
「第32回独創性を拓く先端技術大賞」授賞式で記念講演する桐蔭横浜大学医用工学部の宮坂力特任教授(右端)=7月11日、東京・元赤坂の明治記念館(酒巻俊介撮影)【拡大】
さらに、今JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同研究を進めています。木星や火星は光が弱く、シリコンは電圧が下がって発電できません。家庭に設置する太陽電池パネルも曇りや雨の日に発電できないのは同じ理由ですが、ペロブスカイトは屋外だけでなく、屋内の小型発電にも利用できます。これは何につながっていくかというと、これから日本で増えるIoT(モノのインターネット)産業ですね。例えば、小型無線などにも使っていけます。
また通常、シリコンは1400度以上の温度で製造し、薄膜太陽電池は蒸着を使いますが、ペロブスカイトは120度くらいの温度があれば大体製作できますので、大学の研究室の机の上でもつくれます。塗って乾かす時間は30秒~1分くらいです。ぺロブスカイト材料は非常に薄くて、材料そのものは1平方メートルあたり100~200円。実際の太陽電池はそれに架台を設置したりしてコストが膨らみ材料だけでは安くなりませんが、薄くて軽いペロブスカイトならば、設置も安くなります。
今ペロブスカイトは太陽電池だけでなく、例えばカメラのセンサーにも使われており、医療分野での貢献も大きいです。光だけでなくエックス線を吸収しても電流を出しますので、被ばく量が少ないレントゲンのセンサーとしても、韓国で今開発が進められています。将来はレントゲンのイメージングプレートがペロブスカイトに代わっていく可能性もあります。ほかにも、われわれが使っているLEDよりも発光の特性が高いことから、将来いろんなデバイスのディスプレイで導入される可能性があります。