【視点】中小企業の危機的な人材「四重苦」問題 家族経営の柔軟性で解消を (3/3ページ)

「金の卵」という概念も、昔と変わり始めているようです(鈴木健児撮影・写真と本文は関係ありません)
「金の卵」という概念も、昔と変わり始めているようです(鈴木健児撮影・写真と本文は関係ありません)【拡大】

 離職防止につなげるサービスも、広がっている。ITベンチャーのアルカディア・イーエックス(東京都江東区)は、現場の従業員の悩みや不満、要望を本社が共有するシステムを開発し、飲食、居酒屋、弁当店や衣料品小売りチェーン、介護分野などで導入が進む。槇千亜紀副社長は「人材定着が重要な経営課題であることが浸透してきている」と話す。人材大手のパソナグループも、大学との共同研究で「社員を大切にし、好業績を上げている『良い会社』」をモデル企業として偏差値化し、比較できる「企業の健康診断」事業を立ち上げた。

 日商の三村会頭は「大手も中小も共に栄えなければ生きていけない」と、人材確保に関し、大企業による下請けやサプライチェーンへの支援を求める。業界を越えた転職や再雇用を支援している公益財団法人の産業雇用安定センターも、中小への人材のマッチングを強化しているが、リクルートワークス研究所の古屋氏は「国の支援も、採用支援だけでなく人材育成、定着支援にシフトしていく必要がある」と指摘する。

 女性を積極活用したり、顧問契約で外部の人材を起用する企業も増えている。共通するのは、「社員の定着」を経営としてどれだけ真剣に考えるかだ。人の流れができても、受け入れる器が整っていなければ意味がない。

 働き方の柔軟性は、社員との距離が近く、トップダウンで意思決定できる中小の方が大企業よりも高い。「家族経営」の良さを生かし、対話を通じて人材育成に努めれば、多様化の時代にあって、若手の新規採用にもつながると期待される。