携帯電話の基地局需要は一巡し、ガラケー(従来型携帯電話)からスマートフォンへのシフトで端末製造から撤退。半導体や個人向けパソコン、インターネット接続と不振事業を次々に手放し、直近の年商は2兆8400億円余り(30年3月期)と最盛期の半分近くに縮んだ。今年も3000人をリストラする。
こうした、じり貧状態を突破し、新たな稼ぎ頭へ育てようとNECが目指しているのが、顔認証技術などを中心とした「社会ソリューション事業」だ。32年度に売上高3兆円、本業の稼ぐ力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)5%を目標とする中期経営計画の核と位置付け、グローバル展開を急ぐ。
その裏付けとなる顔認証の技術力は折り紙付きだ。
米国立標準技術研究所(NIST)が主催し、世界16チームが競うコンテストで1位の評価を過去4回連続で獲得。認証精度(認証率97%以上)、照合速度(0.3秒で160万件)ともにトップに輝き、悪条件(大観衆がひしめく競技場)を想定した運用でもエラー率が最も低かった。
これまでの導入先は40カ国以上に上る。
海外では、アルゼンチンの犯罪多発地域で市街監視システムに採用した結果、2008年からの5年間で車両盗難事件が80%減少した。米国や英国の警察へも技術を提供している。
国内ではデータセンターなど企業の保安システムへの導入が多いが、一般市民が接する場へも着実に広がりつつある。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)の年間会員の入園手続きや、人気アイドル「ももいろクローバーZ」などのコンサートで来場者の本人確認に使われるようになり、話題になった。