苦境に立たされた星野社長は現場の声に耳を傾け、「社員の働きやすい経営」に大きくかじを切る。社員がやりたがらないような酔っ払い相手の宴会を止め、社員が夢を持てるブライダル事業などに注力、トップダウンの仕事の仕方から現場に大きな権限を与え、好きなようにやらせた。
これが功を奏し社員は水を得た魚のように働き、経営再建の大きな原動力となった。「任せれば、人は楽しみ、動き出す」と星野社長は語っているが、久美子社長は社員を信じ、社員に仕事を任せることができていたのか。今から思えば、それが残念でならない。
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【プロフィル】松崎隆司
まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は多数。昨夏に『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』を出版。55歳。埼玉県出身。