【高論卓説】構想・企画・設計力の時代 行動できるリーダーますます必要 (1/2ページ)

※画像はイメージです(Getty Images)
※画像はイメージです(Getty Images)【拡大】

 元本田技研工業の工学博士を主査として、鹿島平和研究所で今秋から始まったバーチャル・エンジニアリング研究会に参画する機会を得て改めて驚いている。「ものづくり」の常識が変わりつつあることはなんとなく理解していたが、ここまで変わってきているとは、というのが率直な実感だ。

 私自身まだ消化不良な部分が多く、詳細を説明できる段階にはないのだが、単純化すれば、試作や検証などの作業が、ものすごい勢いでバーチャル化されてきているということだ。つまり試作などせずとも、コンピューター上で結果を試すことができ、そのデータが公式なものとして認定される世の中が始まっている。別の言葉で言えば、自動車のように部品点数が多いものについても、ほぼ完全に、「ものづくり=構想・企画・設計」に変わりつつある、ということだ。

 ファブレス(工場を持たない)企業の代表として有名な米アップル、その成功などからよく言われることの多いスマイルカーブ、すなわち「ものづくり」のプロセスにおいて、上流(構想・企画・設計)と下流(アフターサービスやコンテンツ)の利益率が高く、その中間は低い(したがって外注することが多い)というセオリーについては、少し前からよく言われている。ついに、自動車のようにものづくりに「すり合わせ」が問われるとされてきた分野にも、時代の波が押し寄せてきていることをひしひしと感じる次第だ。

 週末に見たTBS系日曜ドラマ「下町ロケット~ゴースト」でも、ファブレス企業(ただし「ものづくり」の精神は大切にしている)の「ギアゴースト」社が重要な存在として浮上してきたり、主人公が経営するバルブメーカーの佃製作所自身が、トランスミッション分野への展開を図ってみたりと、構想・企画・設計の時代の流れを感じさせる内容になっているが、もはや色々なところでこれは不可逆な現象なのであろう。

続きを読む