【高論卓説】「大学18年問題」大騒ぎの後で 少子化対策など自己改革進める契機に (2/2ページ)

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 18年問題の警鐘は、文科省が高等教育機関の政策を遂行する上で追い風となった。大学も自己改革を進める理由にした。つまり、この問題提起は、大学改革の転換期を迎えているという合図となったといえる。その意味では、政府の教育再生実行会議と連動していたのである。

 学長選出方法、教授会のあり方など15年の学校教育法の改正は、大学のありようを一変させた。理事者側の責任を重視し、ガバナンス(統治)の徹底を説き、教授会の役割を明確にした。大学内に諸問題を抱えていても、解決して一丸となって進むようにもなった。法の改正も18年問題の提起でスムーズに運んだといえようか。

 「文科省が大学改革へ向けて提示する計画あるいは施策は、昨今、唐突とも思えるほど急激に進んでおり、大学関係者も戸惑いを隠せない」と、私大団体が嘆く。かつて文科省に籍を置いた私も同感である。高齢化、少子化時代を迎えて改革の必要性は認めるが、内閣・官邸主導の政策形成が大学無償化のごとく定着しつつある状況を憂う。

 文科省関係の審議会などで政策が生まれず、政府のイノベーション政策の一部として大学改革も位置づけられている印象を受ける。文科省が官邸の下請けの役所と映るのは残念だ。大学に関する専門家でない人たちによって、「補助金」という餌を横目に大学が踊らされる昨今だ。大騒ぎした18年問題は、大学よりも文科省の政策変更のシグナルだったといえそうだ。

                  

【プロフィル】松浪健四郎

 まつなみ・けんしろう 日体大理事長。日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。博士。71歳。大阪府出身。