「ホテル寿司」のパイオニア的な存在
「古臭い」「気難しい高飛車な職人が握っている」というイメージが強い江戸前ずしとは一線を画し、顧客本位を貫いてきた。銀座本店は新館も合わせ123席を擁し、カウンターだけの小規模店が多い高級すし店とは一線を画す。この異例ともいえる大型店は、観光バスもコースに組み入れるほどの人気を誇っている。
店舗は、銀座本店の他、ホテルオークラ東京、ホテルニューオータニ、京王プラザホテル(東京都新宿区)、帝国ホテル大阪(大阪市)に構えており、「ホテル寿司」のパイオニアでもある。
しかし、近年は大人数の顧客をさばくため、シャリ担当、魚を切る担当、握って接客する担当などと細かく分業することの弊害が目立つようになり、仕事全体が見えない職人が増えたとの批判も聞く。
建て替えをホテルオークラが決断した背景
取り壊されたホテルオークラ東京旧本館は、日本の伝統美とモダニズムが融合し、海外の芸術家や美術商から昭和建築の傑作と高い評価を受けていた。そもそも壊すべきだったのかという論議もあり、久兵衛がなかなか立ちのかず最後まで居座ったのも、単なるわがままだと断じることはできない。また、旧本館はこういったデザインコンセプトだったので、久兵衛がふさわしいと指名された面もある。
旧本館において、久兵衛はホテルオークラ直営の天ぷら「山里」と一体になった店舗で運営されていた。店に来て、すしが食べたければ久兵衛に案内され、天ぷらならば山里に案内された。会計は同じレジだった。
現在、別館の2階にある山里と通路を挟んだ向かいに久兵衛がある。しかし、建て替えを巡るトラブルで、久兵衛はルームサービスと宴会場で提供されるメニューから外されており、売り上げは激減している。代わりに、久兵衛出身者が運営する競合店がそれらを任されているといった報道もあった。
新しい移転場所は「超おいしい場所」?
2019年に完成する新しい本館はグレードの違う2棟で構成される。ホテル施設に特化した17階建の「ヘリテージウイング」と、オフィスやチャペルなども入る41階建の「プレステージタワー」が建設中だ。
ヘリテージウイングは旧本館のデザインを極力受け継ぐようにしており、1泊7万円ほど。山里がテナントとして入る。プレステージタワーは1泊5万円ほどで、アーケード街に久兵衛が入る。
これだけ見れば確かに値段的にも久兵衛の格落ち感はあるが、プレステージタワー最上階には1泊300万円という究極のスイートルームが設けられる。しかも、アーケード街は別館を見ると銀行のキャッシュコーナーなどもあるが、高級ブティック、宝飾品なども入るはずで、高級飲食店が入るにふさわしくないどころか、「超おいしい場所」になる可能性がある。