【経済インサイド】相次ぐオープンイノベーション ベンチャー主導で迅速化 (2/3ページ)

パナソニックを休職して、チョコレートドリンク事業に挑戦する、ミツバチプロダクツの浦はつみ社長
パナソニックを休職して、チョコレートドリンク事業に挑戦する、ミツバチプロダクツの浦はつみ社長【拡大】

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 カフェに置くには、デザインは最優先。浦社長が、自ら米大手IT企業でプロダクトデザインエンジニアの経験もあるダグラス・ウェバー氏らを口説き落とし、具体的に動き出してから、わずか2カ月半という短期間で試作機の作成にこぎつけた。ちなみに大企業の宿命もあり、パナソニックではデザイナーとの契約手続きだけでも時間がかかり、社内のこの種のケースでは1年程度かかるのが一般的だったという。

 浦氏をはじめ新会社の社長になる人は、パナソニックを休職し給料も自分で決める仕組み。退路を断ち、移籍する手もあるが、「休職」ならば、家族の同意も得やすいと、春田氏がパナソニックにかけあい、挑戦しやすい環境をつくった。チャレンジを経験した人材がパナソニックに帰り、新たなチャレンジを行うことで、企業風土の改革につなげたい狙いもある。

 春田氏は「日本は技術や研究をバックにした優秀人材やアイデアが大企業の中に閉じこめられたままになっている」との長年の思いを、シリコンバレーで面接したアプライアンス社の本間哲朗社長にぶつけ、意気投合し、その後、スクラムが51%、パナソニック49%を出資して合弁会社を設立するに至った。

 さらに11月に、官民ファンド、産業革新投資機構傘下のINCJ(東京都千代田区)がビーエッジへの出資を決めた。INCJではビーエッジが成功すれば他の大手電機メーカーでも同様の試みをして、埋もれる技術の事業化につなげたい考えだ。

 日本では起業を含めた開業率は5.6%にとどまり、軒並み10%を超える欧米に比べて低い水準だ。それだけに大企業の意識改革を促す、今回の取り組みは「現実的」と期待する向きもある。

まずは社会に問う