【ゴーン事件を聞く】(上)「少数株主が受益者」徹底を (2/2ページ)

インタビューに答える経営共創基盤の冨山和彦CEO
インタビューに答える経営共創基盤の冨山和彦CEO【拡大】

 --ルノーと日産の関係も問題の要因か

 「資本の論理で大株主のルノーの言うことを日産が聞くのは当たり前というのがあるが、ガバナンス論では根本的に間違っている。上場企業における世界標準の考え方では、ガバナンスの第一の受益者は大株主ではなく一般少数株主だ。日産がルノーに言われて効率の良くない工場で車をつくったりすれば、ルノーは日産の一般株主に訴えられる危険性もある」

 「逆にいうと、ガバナンス上はルノーの優先順位は低い。それなのに高くなっていたことを何も疑問に思わないのは、日本が資本主義国家として“後進国”だということ。いろいろな意味で見直す良いチャンスだ」

 原理原則議論せよ

 --実質的な親子関係にありながら対等なアライアンスという構造がおかしい

 「ガバナンス上のゆがみを正すには、資本関係を正常化することだ。対等のアライアンスというならそれにかなう対等の持ち株にするか、一般株主との利益相反の問題を起こさないように完全な親子関係にするかどちらかしかない」

 --今後、ガバナンスの再構築に向けた議論が本格化する

 「ガバナンスの受益者は大株主ではなく一般少数株主だという上場企業の原理原則をきちんと議論すべきだ。その憲法第一条がしっかりしていれば、必然的に親会社側から過半数の取締役が来るようなことなどはおかしいとなってくる」

【プロフィル】冨山和彦氏

 とやま・かずひこ 東大法学部卒、スタンフォード大経営学修士(MBA)。1985年、ボストン・コンサルティング・グループ入社。コーポレイトディレクション社長、産業再生機構業務執行最高責任者(COO)などを経て、2007年から経営共創基盤の代表取締役最高経営責任者(CEO)。和歌山県出身。58歳。