【道標】社会に影響及ぼす「GAFA」 消費者の安全確保へ一定の責任を (2/2ページ)

林秀弥・名古屋大教授
林秀弥・名古屋大教授【拡大】

 そのような中、新技術に法が追い付いておらず、法を執行する能力や仕組みが不足する(例えば、規制当局がデジタル市場を十分に監視できていない)など、法とアーキテクチャー/コードとの間にギャップが発生している。

 今回の基本原則は、このような現状を意識したものである。欧州連合(EU)が昨年4月、PFの公正性・透明性の促進に関する規則案を公表し、オンラインプラットフォーム経済監視委員会を設立して、EU競争法・消費者法の執行を補完し、社会基盤としてのPFのコードの分析を行うと表明したが、日本の基本原則はその流れに沿ったものでもある。

 基本原則は、巨大PFの運営・管理の透明化を図る必要性について一石を投じたものだが、今後、インターネットガバナンスに関するあるべき規範に立ち返りつつ、PFに関する公正かつ自由な競争とはどうあるべきか、再定義・再構築していく必要があろう。

 これまでわが国では、PF上で違法な取引・行為が行われた場合であっても、PFは単なる「場の提供者」であるから積極的な責任は負わないと解する向きが強かった。しかしながら、市場のゲートキーパーとしての機能も有するPFに一定の役割・責任を担ってもらうことが、ユーザーの保護や消費者の安全確保などを図る上で効果的であると思われる。

 またPFにとっても、取引の安全・安心を確保することが、取引相手や消費者からの信頼を集めることにつながり、ひいては自らの健全な発展を促すことにもつながるだろう。

【プロフィル】林秀弥

 はやし・しゅうや 名古屋大教授。1975年兵庫県生まれ。京都大博士。神戸市外国語大専任講師などを経て現職。専門は独占禁止法、情報法。共著に「情報法概説」など。