【水と共生(とも)に】公設民営方式と水道民営化は“別物” (1/2ページ)

改正水道法が賛成多数で可決、成立した衆院本会議=2018年12月6日
改正水道法が賛成多数で可決、成立した衆院本会議=2018年12月6日【拡大】

  • 秋田市の仁井田浄水場。1群施設のアクセレータ3基(荏原インフィルコ製)は1957~60年納入。2群施設の同4基(同)は67年の納入だ
  • 秋田市の仁井田浄水場の送水ポンプ設備(荏原製作所製)は1966年納入だ

 自治体が水道事業の運営権を民間企業に売却するコンセッション方式(公設民営)を導入しやすくする改正水道法が、昨年12月に衆院本会議で可決、成立した。目的は「水道事業の基盤強化」で、民間のノウハウで水道事業を効率化し、立て直すことを狙う。野党側は、サービス低下や料金高騰、水質悪化、災害対応などで懸念があるとして、水道事業の実情を理解しないまま反対を唱えた。本稿では、日本の水道事業の現状と、改正後にやるべきことを述べたい。

日本の事業の現状

 国連加盟193カ国のなかで水を蛇口から直接飲めるのは、わずか16カ国である。そうしたなか日本の水道普及率は98%で、世界で最も安全安心な水道サービスを提供している。水道管から漏れ出している水の割合(漏水率)は世界平均で30~40%なのに対し、日本は全国平均で7%以下(東京都は3%以下)となっており、世界で最も完成された水道システムと評価が高い。

 その水道も実情をみれば多くの課題を抱えている。

 ・人口減少や節水機器の普及により料金収入が減少(ここ10年で約2000億円減少)。

 ・水道事業の有利子負債(借金)が約8兆円なのに対し、年間料金収入が約2兆3000億円で、年々借金が積み上がっている。全国の1381水道事業体の約3割が赤字(一般会計から繰り入れ)。

 ・水道施設の老朽化が加速し、耐震化、大災害への対策で多額の費用捻出が必要。

 ・水道技術者が高齢化して定年退職が増加し、30年前の約8万人から現在は4.5万人以下になっている。水道事業には地域特有の条件(水源、気候、人口、産業、水需要など)があり、地域に密着した技術者がいなくなると技術・ノウハウを伝承できなくなる。

 ・水道事業を運営する自治体の約7割は給水人口5万人以下で、3割の自治体が赤字である。また、一般会計からの繰り入れで黒字に見せかけている自治体も多く、隠れ赤字の自治体は約5割と推定されている。

 日本の水道は「カネ、モノ、ヒトが同時多発的に失われている」のが実情だ。

改正水道法の概要

 (1)骨子

 ・水道事業の資産を適切に管理するため、足元の財政状況、今後の料金収入見通し、必要な老朽化対策費用を調査し、対策を講じる。

 ・水道事業の統合や広域連携を推進し、事業の効率化、コスト低減を目指す。

 ・それでも駄目なら官民連携を推進(オプションとしての選択肢)。

 官民連携の具体策として「コンセッション方式」が推奨されている。法案には「民営化」という文言は一つもないが、多くの反対派は、水道事業の全てが民営化されると勝手に思い込み、「日本を外資に売り渡す暴挙。料金が高騰し、サービスが低下する」と大騒ぎしている。(2)改正法に反対する理由

 海外では、水道事業の全てを民間に任せ、大きな問題が起きている。そもそも水道事業は地域独占で、20~50年も運営していると必ず料金値上げとサービス低下という問題に直面する。世界では1990年代から水道民営化が進み、多くの弊害が出た。その結果、2000~15年の間に世界37カ国の235の水道事業で再公営化が進んだ。

 改正法が推奨するコンセッション方式は、運営権を民間に譲渡するため、水道民営化のさきがけになると危惧され、大きな論議が沸き起こった。

 筆者にいわせると、コンセッション方式と民営化は全くの“別物”だ。ただ、今回の改正法のなかに、公的な監査機関設置の項目がないことは問題である。

 改正法では自治体が水道を管理監督し、所有権を持つと規定しているが、中小自治体には技術や経営ノウハウを持った人材が少なく、水道の管理監督が難しい。

 給水人口1.5万人以下の自治体の専従水道局員は平均4人で、日常業務に忙殺されている。こうした自治体の半数は赤字財政で、コンサルタント費用も出ない。

 (3)水道が外資に狙われる理由

 日本の水道が外資に狙われるのは(1)市場が大きい(年間水道料金収入は約2兆3000億円)(2)料金支払い率が高い(99.9%は世界最高)(3)漏水率が低い(補修費があまりかからない)-からだ。こんなおいしい水道市場は世界にはない。

今後どうすべきか