3つめは「脅威」です。「加齢臭」「脇汗」「メタボ」などのように、解決すべき問題を顕在化させます。この場合は、脅威と同時にその解決策を提示することでマーケットが生まれます。ただし、安易にマーケティングに使うと、消費者に「金儲けのために危機感を煽っている」と捉えられ、反感を買うリスクがあります。
4つめは「カテゴリー」です。最近の例では「クラフトビール」「サードウェーブコーヒー」などが挙げられます。カテゴリーは1つのブランドだけでは成立しません。例えば、サントリー「ザ・プレミアム・モルツ」の登場で「プレミアムビール」というカテゴリーが広まりましたが、以前からそのカテゴリーにはサッポロの「ヱビスビール」がありました。しかし、1ブランドしかなかったためにカテゴリーとして広まらなかったのです。このことから言えるのは、カテゴリーを1社で独占するのではなく、他社とともに広げていくことの必要性です。少し前に「食べるラー油」がブームになりましたが、あのときは、先行した桃屋に、それまでラー油市場で9割以上のシェアを持っていたS&Bが、対抗商品をぶつけたことによって話題になり、広く認知されることにつながりました。
いずれにせよ、賛否両論が起きるようなことばのほうが話題になりやすいため、市場の創造につながる可能性は高まります。ただし、そういうことばは炎上するリスクもあり、使う場合には注意が必要です。
松井 剛(まつい・たけし)
一橋大学大学院経営管理研究科教授
一橋大学商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。専門はマーケティング、消費者行動論、文化社会学など。著書に『いまさら聞けないマーケティングの基本のはなし』『ことばとマーケティング』、共著に『欲望する「ことば」』など。
(一橋大学大学院経営管理研究科教授 松井 剛 構成=増田忠英)(PRESIDENT Online)