【成長への挑戦 熊谷組の120年】(5-3)安全・効率的な工事を実現 (2/3ページ)

無人化施工の様子
無人化施工の様子【拡大】

  • 拡張型高機能遠隔操作室
  • 地盤条件が過酷な大深度地下に対応したトンネル工法「新KM21TM」
  • 「新KM21TM」の拡大図
  • JAXAと共同研究する月面での資材運搬システムのイメージ
  • 自立歩行支援器「フローラ・テンダー」
  • 超長距離掘進や複合地盤に対応したサンライズビット工法
  • 「KUMAGAISTARPROJECT」で建設した校舎の授業風景

完全自動化への布石

 これらの技術を発展させる形で、2018年1月には作業現場で土砂などを運ぶ不整地運搬車(クローラキャリア)を自動走行させる技術を開発した。操作室から遠隔で行うオペレーターの運転操作をコンピューターに記憶させ、自動走行させる仕組み。決まったコースでの土砂運搬の作業は、災害復旧現場では最も多い作業だが、単調ゆえにオペレーターの疲労蓄積や集中力の低下を招き、思わぬ重大事故が発生することもある。二次災害を防止する自動化技術で、復旧を迅速に行えるようになるという。

 同年4月には拡張型高機能遠隔操作室も開発。従来型では災害現場で遠隔操作室を設置するのに最低でも5~10日必要だった。新しい遠隔操作室はモニターなどの機材を設置したまま10トントラックで搬送可能で、最高で3棟まで連結して使用することができるという。ハイビジョンによる高精細映像の表示、ネットワーク構築なども簡略化し、設置期間を1~3日に短縮できる。一刻も早い復旧を望む現地の期待に応える技術といえるだろう。

 こうした土木技術を実際の災害復旧に迅速に活用するため、同社は2018年11月、協力会社からなる熊栄協力会の土木系専門工事会社17社と協力し、災害時の応急復旧対応チーム「KUMA-DECS(クマデックス)」を結成した。DECSはDisaster(災害)、Emergency(緊急)、Construction work(建設作業)、Support(救援・支援)の頭文字をとったものだ。

 同組織は、災害発生直後に迅速な機動が求められる建設重機や無人化施工オペレーターなどの保有会社17社(発足時)で構成され、担当地域別に東日本ブロック(7社)、中日本ブロック(5社)、西日本ブロック(5社)でチーム編成される。発災時には、あらかじめ定めたリーダー会社が中心となり、国や自治体・インフラの施設管理者などからの出動要請を受けた熊谷組と連携し、資機材の手配や会社間の調整など、応急復旧工事への対応体制の立ち上げを迅速に進めるという。平時においては、無人化施工オペレーターの養成を行い、熟練オペレーターの技能を次世代へ継承するとともに技能保有者の増員を図る予定だ。

シールドマシンの新展開

 熊谷組は創業以来、トンネル施工で多くの難工事を成功させてきた。業界内では「トンネルの熊谷」との呼び声も高い。そうした中、同社が挑んだのが多くを人力に頼る山岳トンネル掘削の完全機械化だった。都市部で活用されているシールド工法は完全に機械化された工法だが、岩盤や高水圧下などで使用に制限が多かった。同社では2002年に地盤条件が過酷な大深度地下に対応したトンネル工法「KM21TM」を確立。今回、それをさらに進化させ、「新KM21TM」と命名した。

 同工法では掘削機本体で地盤改良や水抜きを行いながら掘削。掘削断面は無駄がなく合理的な馬てい形とした。掘削と並行して一時支保構造を早期に実現するため、地山のゆがみを最小化できる。充填(じゅうてん)式コンクリートよりも施工性がよく安価な吹き付けコンクリートを使用することで、短工期、コスト圧縮など実用性を高めることができたという。今後は鉄道トンネルや道路トンネルへの適用を増やしていきたい考えだ。

 同社は2017年、JIMテクノロジー(川崎市)と共同でシールドマシンのカッタービットの交換技術「サンライズビット工法」を開発した。長距離の掘進や複雑な地盤、硬い巨礫地盤でのシールド工法では、カッタービットを交換する必要が生じる。そのために作業員がシールドマシン前面に回り交換する必要があり、危険も伴ううえ作業効率も低下する問題があった。

 今回、両社は複数のビットが仕込まれた部分を回転させ、ビット交換を自動的に行うシステムを開発。シールドマシンに搭載することでビット交換作業を大幅に省力化した。これにより10キロメートル程度の超長距離掘進や土砂地盤から岩盤までの複合地盤、大深度、高水圧で地盤改良ができない条件でもシールド工法を適用できるようにした。トンネル掘削の工期短縮、コスト削減の切り札となりそうだ。

他社連携技術が宇宙へ