プロジェクト最前線

やりがい、社会課題解決を両立 一般社団法人PLAYERS 「&HAND」 (2/3ページ)

「LINE」を活用

 そこで、既に社会インフラとなっている無料通信アプリ「LINE」を活用した&HANDの仕組みを考えた。17年12月、東京メトロ、DNP、LINEと共同で実施した地下鉄・銀座線での妊婦向けの実証実験では、LINEの友達登録者数が1万1415人に上り、実際に参加した支援者数は約270人。席を譲られた妊婦の割合は87%に達した。中には、デバイスを持っていない妊婦を探して席を譲った人もおり、「この仕掛けがなくても、自然と手助けができるんだと感動した」(瀧澤さん)。

 最近、メディアに取り上げられるケースが増えたこともあり、視覚や聴覚などの障害のある人から「メンバーになりたい」という相談が増えている。「助ける側として協力したい」という彼らの思いに、瀧澤さんはこれまでの活動に自信を深めている。

 米国発祥の考え方のプロボノをめぐっては、10年ごろから日本でも知られるようになった。「ビジネス以外の場で職能経験を積むことができる」(東京都内の人材サービス会社)ため、社員の人材育成として注目されたこともあった。

 PLAYERSのケースは、「大企業と協業して社会的課題を解決する」というロールモデルとなったが、本業の忙しさを抱えた個人にとっては負担も大きかったようだ。瀧澤さんは「みんな忙しく、リソースも限られている。何を捨てて何に注力するかを常に考えた」と振り返る。

 ビジョンとして社会的課題の解決を掲げる大企業は多いが、収益追求の建前もあって組織となると動きが鈍くなってしまう。プロボノの新しい役割が浸透すれば、日本社会に活気が出てくるはずだ。(鈴木正行)

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