いまエネルギー・環境を問う 竹内純子の一筆両断

エネ・環境相会合でみせた「日本の奇跡」 (3/3ページ)

 もちろん成功要因は、イノベーションを前面に出したことだけではないでしょう。環境問題という国際的な課題に対して、統一的な成果文書を出すことを前提に、粘り強く交渉した関係者の努力や、各国から集まった参加者に対して示されたわが国のホスピタリティも評価されたのだと思います。面白いもので、2015年に開催された国連の会議でパリ協定の採択に成功した背景には、会議場内にパン焼き窯まで持ち込んで参加者の食事に配慮を示したフランス政府のホスピタリティも大きく影響したのではないか、と会議参加者の間で話題になったことがありました。ちなみに、地球温暖化に関する京都議定書や生物多様性保護に関する愛知議定書など、とりまとめが難しいといわれた環境関係の枠組みを、日本はこれまでまとめてきました。多様な意見をバランス良く聞いて、相手の立場を尊重しながらまとめてきたこうした外交実績を「日本の奇跡」と呼んでくれる人もいるのです。

 さて、成果文書は出ました。これからが実行の段階です。RD20など新しい取り組みが「仏作って魂入れず」にならないよう、提案した日本がリーダーシップを発揮せねばなりません。会議は終わりましたが、これからが議長国としての本気の見せ所なのかもしれません。

     

【プロフィル】竹内純子(たけうち・すみこ)

 昭和46年、東京都出身。慶応大卒業後、東京電力を経て平成24年からNPO法人「国際環境経済研究所」理事。筑波大客員教授。著書に「誤解だらけの電力問題」(ウェッジ)や「原発は“安全”か-たった一人の福島事故調査報告書」(小学館)など。「正論」執筆メンバー。

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