市場は一気に拡大
電動車椅子には、「モデルC」のようなレバーで操作する「ジョイスティック形」以外に、シニアカーと呼ばれる「ハンドル形」もある。これらを合わせた電動車椅子の市場は近年、拡大を続けている。
電動車いす安全普及協会によると、平成30年の出荷台数は2万4772台となり、直近5年間で5千台以上増えた。高齢ドライバーによる事故が社会問題になっただけでなく、29年3月施行の改正道交法で75歳以上の免許更新の際の認知機能検査が厳格化されたことで、需要が一気に押し上げられた可能性がある。
このため、将来のさらなる需要増を見越して開発や製造に力を入れるメーカーは多く、国内ではWHILL以外にもスズキやヤマハ発動機などが商品を展開。個人向けの販売にとどまらず、福祉施設や病院と貸与契約を結ぶなどして販路の開拓を進めている。
普及には課題も
警察庁によると、30年に運転免許を自主返納したのは約42万人(75歳以上は約29万人)で、2年連続で40万人を超えた。一方で、電車やバスなどの公共交通機関が発達していない地域では高齢者の「生活の足」をいかに確保するかが課題になっている。
国土交通省が27年に全国約4万4千世帯から回答を得た「全国都市交通特性調査」では、75歳以上で自動車を保有しない人の外出率が50%を切る結果が出た。免許返納後に満足に外出できない高齢者が多数に上ることが推察される。
電動車椅子は、数キロ程度の距離を移動する街乗りであれば、自動車に代わる交通手段になり得る。