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インバウンド急増「亡国の落とし穴」 東洋文化研究者、アレックス・カーさんに聞く (1/4ページ)

 日本を訪れる外国人旅行者数が右肩上がりだ。昨年は3千万人を突破し、政府は東京五輪・パラリンピックを開催する来年に4千万人の目標を掲げる。「観光立国」推進は経済再生のカギとばかり明るい側面が強調されるが、東洋文化研究者のアレックス・カーさんは「過剰な観光客は公害だ」と言う。生活環境の悪化や金を落とさない「ゼロドルツーリズム」問題など「観光亡国」を避けることが必要と語った。(聞き手 坂本英彰)

 ――インバウンドをどう見ていますか

 「2003年に当時の小泉純一郎首相が『観光立国』を宣言し、たった十数年で驚くほどの成果が出ました。京都に住んでいると、おびただしい観光客の訪日を実感します。そもそもは停滞する日本経済の再生が目的でしたが、観光産業はいまではトヨタ自動車の収益に匹敵するくらいになりました。日本経済は観光に依存する面が出てきたのです」

 ――世界的にみて特殊な現象なのでしょうか

 「いえ日本はむしろ遅い方です。バルセロナやアムステルダム、タイやベトナムなど各地で観光客が激増しています。中国や東南アジアなどで新興国が発展し、生活が豊かになった人たちが億単位で現れた。格安航空会社(LCC)が登場して旅行費用が安くなった。こうした理由で一挙に海外旅行者が増えたのです。海外ではいまや、観光客の増えすぎによる弊害、すなわち『オーバーツーリズム』が大きな問題になってきています」

 ――どういうことですか

 「多すぎる観光客による住民生活の質の低下や、民泊を目当てとした不動産投機などによる家賃高騰、観光客が出すごみの問題など悪影響が深刻になっているのです。バルセロナなどでは観光産業に対する反対デモまで起きています」

 「実はオーバーツーリズムは日本でも起きているのですが、よく認識されていません。京都について言えば、もうゆっくりお寺回りをできるような状況ではありません。嵐山にある竹林の小径(こみち)は山手線のラッシュのように混雑し、竹を楽しむ瞑(めい)想(そう)的な雰囲気など吹き飛ばされてしまっています」

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