――どう対処すればいいのでしょうか
「量から質への転換が必要です。観光客を増やすだけの考えはもう古い。アムステルダムなどでは旧市街に新しい宿泊施設を認めない、大型クルーズ船の寄港地を郊外に移す、商店街の店舗入れ替えは選定委員会で決めるといったことが行われています。オランダ政府の観光機関は今年、観光促進には予算を使わないと発表しました。放っておいても来てくれるから促進する必要はないのです」
「日本の著名観光地も促進から規制に変える段階に来ています。富士山は千円の入山料を任意で求めていますが、この程度で混雑緩和は見込めません。1万円の支払いを義務づければ興味半分の人はあきらめ、本当に登りたい人だけが来るでしょう。かりに登山者が9割減っても収入はあまり変わらず、ごみやトイレの問題は解消します」
――富裕層優遇になりませんか
「観光客が一定数を超えれば、誰でもいつでも受け入れるとの考えは断念しないといけない。ただ高い料金で観光客を減らすだけではなく、事前予約した場合には割引するとか学生や地元住民への特別割引などきめ細かな対応も必要でしょう」
――富士山や京都のように観光客があふれている所ばかりではありません
「人口減少に悩む地方にとっては観光こそ再生の切り札です。ただ多くの客に来てもらうだけが方策ではありません。私が取り組む徳島県三好市・祖谷で古民家を貸すプロジェクトでは、茅葺きの古民家の一棟一泊で3~4万円です。宿泊者ひとりあたりの収益は大型バス1台分の、ジュースを買うだけの立ち寄り観光客と同じくらい。利用者は年間約3千人ですから、1日平均は10人以下。バスに乗った観光客が押し寄せるのと違って、地元住民生活への影響はとても小さいのです」
――発想の転換が必要ですね
「まずは観光公害の存在を認識する必要がある。日本はかつて大量生産型の製造業で成功したが、環境破壊や公害に目を向けなかった。私は子供のころ横浜に住んでいたが当時の大気汚染はひどかった。残念ながら観光業はまだ1960年代の大量生産時代のままです。公害があるのに無視し、数や量を強調しているのです」
「それに日本の製造業は後に安価な中国製に押されて苦しんだが、先端技術で質をあげたものは生き残りました。日本の観光産業もいまインバウンドの刺激を受けています。ピカピカの大理石が定番だった日本のホテルが外資系の影響によって洗練された和風インテリアを取り入れはじめるなど、変化は出てきています」