開発しのぎ
農業は人手と手間を要する労働集約型産業の典型とされてきた。それが今、スマート農業の進展で大きな転機を迎えている。
無人トラクターや農業ロボットを研究している北海道大の野口伸教授(農業情報工学)は「農家は将来、機械でできる作業は機械に任せ、どのような農作物をどこに売るのかといったビジネス戦略に力を注ぐようになるだろう」とみる。
技術革新の中でも自動運転の重要度は高く、農機メーカーは熾烈(しれつ)な開発競争を繰り広げている。
「無人化」を売りにしたロボットトラクターは、クボタが約3年間の開発期間を経て平成29年にいち早く試験販売を開始。30年にはヤンマーと井関農機が追従し、市場シェアの大半を占める大手3社で農機の自動運転の「レベル2」に該当する製品が出そろった。
作業員が有人トラクターに乗って監視しながらロボットトラクターも同時に動かすと、作業効率は1・5倍に跳ね上がるとされる。クボタの佐々木真治専務執行役員は「ロボットトラクターの導入で農家の生産性は大幅に向上する」とアピールする。
その後、クボタは稲を刈り取るコンバイン、ヤンマーは苗を植え付ける田植え機で自動運転対応の機種を発売した。クボタは来年秋にも自動で作業する田植え機を市場に投入し、主要な3つの農機で自動運転を実用化する計画だ。
ただ、自動運転農機は高機能の機種では価格が1千万円を超え、普及が困難な側面もある。ヤンマーホールディングス傘下で農機を扱うヤンマーアグリ(大阪市)の日高茂実・開発統括部長は「コストダウンを図るには販売台数を増やすことが不可欠。まずは導入に向けて顧客の間に自動運転の機運を高めていくことが課題だ」と指摘する。