これに対して、自らオーストラリアを視察した時に見た平屋の街並みに心が動かされた。「平屋建ては、バリヤフリーにしやすい。さらに、階段などのスペースを省けるので、部屋のレイアウトの自由度も増す」と語る。実現したプロジェクトは高い評価を受けている。
成功の背景には、実際に住む人々による暮らしへの満足感がある。欧米の戸建てのように庭を広く取れないため、デザイン性に優れた共有スペースを設置。住む人々の利便性を高めるために、ベーカリーショップを自社で設けたプロジェクトもある。自社で不動産管理会社を設立し、マンションのように住民サービスを提供している。
また、米オレゴン州ポートランドを訪れたときに見たツリーハウスを会社の所有地に建てた。ワゴン販売などのサービスも好評で、市民の憩いの場になっている。また、昨年からは、社会貢献事業として、千葉市の恒例イベント「大賀ハスまつり」のナイトエンターテインメント「夜ハス」を始めた。拓匠開発によるユニークで着実な取り組みはこれからも続く。
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【プロフィル】工藤英之
くどう・ひでゆき 日本大学生産工学部卒。工務店で3年間働いた後、2002年9月、父が経営する拓匠開発に入社。常務を経て09年6月に社長就任。プライベートの旅行を合わせると、約30カ国以上を訪れ、世界中の住宅を見聞する。海外市場にも関心が高い。手始めに、インドで日本人向けの長期滞在型集合住宅の運営を手掛ける。全員参加のチーム経営を掲げ、抽選で決めた4人1組でそれぞれの場所へ訪れる研修旅行も。45歳。
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<企業プロフィル>宅地造成、企画、分譲、建築設計施工、アフターサービスまでを一貫して手掛ける。リノベーション事業にも進出し、マンションから戸建てへの住み替えを含め新たな顧客層の開拓に成功した。千葉県野田市みずき4丁目の194区画の大型プロジェクト「オオソラモ野田みずき」や、千葉公園の近くにあるツリーハウスやキッチンカーを配置したカフェ&コミュニティスペース「椿森コムナ」などのプロジェクトで知られる。千葉市中央区に本社、柏市、福岡市に支店を構える。