この特長をさらに伸ばそうと、クラージュDプラスでは、屋根の断熱材の厚さを40ミリメートルから101ミリメートルと約2.5倍にする、という他社との差別化に挑んだ。
理論上、断熱性能を高めるだけなら、断熱材を厚くすれば良い。しかし、厚くしすぎれば、コスト高になるだけでなく、作業に手間が掛かるなど、施工の効率が損なわれる。顧客の価格に対する満足度が得られるよう、バランスのとれた厚さにする工夫が課題だった。
ここで、ベンチマークとなったのが、建築物省エネ法で定められた北海道(1~2地域)における外皮平均熱貫流率(UA値)。住宅の内部から床、外壁、屋根などを通過して外部へ逃げる熱量を、外皮(住宅の外周)全体で平均した値のことだ。値が小さいほど熱が逃げにくく、省エネ性能が高いことを示す。チームは、クラージュDプラスの基準UA値を0.35に設定し、北海道基準の0.4~0.46を超える目標を立てた。
従来商品と同じ断熱材の2倍の量を使いながらも、コストを抑えるという命題には、購買積算部の山田一隆部長が担当した。山田氏は素材メーカーとの良好な関係を最大限に生かし、良質で安価な断熱材を仕入れることに成功した。山田氏は「高気密、高断熱をどこまで“とんがらせる”かが課題だった」と話し、素材の品質に自信を見せた。
小屋根裏も室内と同環境
コストの壁を乗り越えた後には、建築現場における施工のしやすさや建築基準をクリアするという課題も浮上した。クラージュDプラスでは、屋根の内側に断熱材を貼らなければならない。多くのメーカーが行っているように平らな天井裏に断熱材を敷き詰めるのなら容易だが、勾配のある屋根の内側での作業は通常よりも手間と時間がかかる。