高論卓説

酒税改正控えビール商戦が激化 飲食店囲い込みに巨費、自立を妨げ (1/2ページ)

 「外食をめぐる業務用ビール商戦が、10月から荒れてきた。お金が乱れ飛んでいる」

 外食コンサルタントはこう指摘する。働き方改革からサラリーマンの残業代が減ったことなどで客足が遠のき、苦戦が続く外食産業。一方、ビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)市場も昨年まで14年連続して減少。今年も「前年割れは確実」(ビール会社幹部)とメーカーも厳しい状況だ。(ジャーナリスト・永井隆)

 今年は消費税増税があり、安価な第3のビールが9月までは商戦の中心だった。しかし、10月以降はビールへと主戦場は移行している。

 その理由は、酒税改正が来年10月に迫っているからだ。ビール、発泡酒、第3のビールと3層ある税額が、2020年10月、23年10月、26年10月の3段階で統一されていく。

 350ミリリットル当たりの税額は現在、ビール77円、第3のビール28円と3倍近い開きがある。これが来年10月、ビールは7円減税され、第3のビールは9円80銭増税される。23年10月を経て、最終的には26年に54円25銭で統一される(発泡酒も26年に7円26銭増税される)。第2段階の23年10月には、第3のビールという区分はなくなり、ビールと発泡酒だけになる。税額の統一は、財務省にとっての悲願でもあった。

 一連の税改正を前に、業務用営業を舞台に新たな“ビール戦争”が勃発している様相だ。なお、ビール類の約半分はビールが占める。そのビールの約6割は料飲店向けの業務用だ(外食で発泡酒や第3のビールを提供するのはごく一部)。

 前出の外食コンサルタントは「メーカーから料飲店に協賛金や出資金などの名目で、お金が流れている」と指摘する。

 協賛金は、店が提供するビールの銘柄を切り替えたときに、切り替えた先のビール会社から支払われる。名目はビールサーバーやロゴ入りグラスを入れ替えるため、といった内容。規模の大きなチェーンとなると、巨額の協賛金が飛び交う。さらに、スタートアップの外食に、いきなり大きな出資をするビールメーカーもあるそうだ。また、「例えば50万円の研修費をメーカーが店に代わり負担するケースもある。お金では目立つので、人やコトに置き換えている」(別の外食コンサルタント)と言う。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus