2016年の米国大統領選挙の際、米フェイスブックのユーザー約5000万人分のデータが不正に英国の分析会社に取得された。それは、大統領選挙の結果に影響を与えた可能性があると指摘されている。
また、多くの個人や組織が特定の企業が提供するITサービスに依存するようになると、その企業の経営方針などが個人、企業、公的部門に無視できない影響を与えることも考えられる。
データの寡占化を食い止めるために、欧州連合(EU)を中心に大手ITプラットフォーマーへの規制強化に取り組む国は増えている。一方、規制の強化は、企業の成長を抑制し、経済成長にはマイナスに働く部分もある。各国ごとに、規制強化への取り組みには温度差がある。その間も、最先端のネットワーク・テクノロジーの開発などを受けて、企業の優勝劣敗は鮮明化し、寡占が進んでいる。
寡占化を後押しする不確定要素
世界経済を取り巻く不確定要素が増えていることも、寡占化を後押しする要因の1つだ。企業が急速な変化や先行きのリスクに対応するためには、どうしても体力をつけなければならない。
最先端のがん治療薬などの分野では競争力ある新薬やその開発に関するテクノロジーの確保、新薬候補(パイプライン)の取り込みなどを目指し、世界の大手製薬企業が買収や提携などをくり返している。このようにして、大企業がさらに巨大化し、寡占が鮮明となってきた。
世界経済が大きく、加速度的に変化している要因として、急速なネットワーク・テクノロジーの開発とその実用化の影響は軽視できない。人工知能(AI)の実用化などに伴い、次から次に新しいデバイスや、サービスが生み出されている。
新しいテクノロジーの登場とともに、人々の生き方も変化する。たとえば、わが国でも自動車のシェアリングが普及している。カーシェアのサービスを利用することで、人々は自動車の所有にかかるコストを抑えられる。同時に、浮き出た資金を用いて趣味を楽しむなど、より満足度を高めることもできる。
企業が長期存続するためにやるべきこと
見方を変えれば、浮き出た資金を引き寄せられるだけの魅力あるモノやコトを生み出さなければ、企業が長期の存続を目指すことはむつかしくなっている。この結果、企業間の競争が激化し、対応力をつけるために事業規模の拡大が重視されている。
それだけではない。世界経済の基礎的条件=ファンダメンタルズも変化している。まず、世界各国および企業が一大消費市場として注目してきた中国経済は成長の限界を迎えた。中国では、生産年齢人口が減少し、世界の工場としての地位も低下している。同時に、中国政府は国有企業などに補助金を支給し、IT先端分野を中心に世界シェアの拡大に取り組んでいる。