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“一強多弱”が続く世界経済 GAFAなど大手企業の寡占はいつまで続くのか (3/3ページ)

 米国ではトランプ大統領が企業の国内回帰を目指している。また、米国はIT先端分野で中国と覇権国の地位を争うなど、世界全体で供給体制が混乱している。そのほか、中東の地政学リスクなど世界経済の不確定要素は増大傾向にある。それに対応するために、大手企業などが体制強化に取り組み、寡占が進んでいる。

 寡占を食い止めるために必要な官民の取り組み

 今後も、さまざまな分野で大手企業が新しいテクノロジーの研究・開発を進めたり、競合企業を買収したりすることによって、より大きな市場シェアを手に入れる可能性がある。市場の寡占度はさらに上昇し、特定企業の影響力がより強くなる展開も考えられる。具体的には、特定の企業の価格決定力が強くなり人々の生活に影響が及ぶ、あるいは、経済格差が拡大するなどの展開が思い浮かぶ。

 そうした展開を食い止めるためには、企業と、政府の取り組みが重要だ。

 まず、激化する競争、加速化する変化に対応し持続的な成長を実現するために、企業は常に新しい取り組みを進め、従来にはない“ヒット商品”の創造を目指さなければならない。人々が「ほしい!」と思ってしまうモノやサービスを生み出すことができれば企業は成長できる。企業が自力で寡占に対応し、成長を目指すには、一部の大手企業以上のエネルギーをもって事業戦略や組織を変革し、新しい取り組みを進めることが大切だろう。

 そのためには、企業経営者の役割が重要だ。まず、経営者は自社の強みをしっかりと認識しなければならない。そのうえで、より高い成長が期待できる分野に経営資源を再配分する。同時に人々の多様性を重視し、さまざまな価値観や理論が研究開発などに反映されやすい組織体制を整備する。そうした発想を持つ企業が増えれば、競争は促進されるはずだ。

 企業家のアニマルスピリッツを刺激せよ

 企業がイノベーションの発揮を目指すにあたっては政府の取り組みも欠かせない。寡占の進行を防ぐためには、規制を強化する発想に加えて、より大胆に新しいルールや起業支援策などを設け、企業家のアニマルスピリッツを刺激する政策運営が目指されてよい。

 それは、特定企業にヒト・モノ・カネが集中しやすい状況に変化をもたらすだろう。政府が規制の緩和などを推進することは、より高い成長期待に基づいて経営資源の再配分が促されダイナミズムに富む経済環境の整備につながると期待される。寡占化を防ぎつつ、富の公平な再分配を実現するためにも、企業が変革を目指し、それを政府がサポートしていくことの重要性は高まっていくだろう。

 真壁 昭夫(まかべ・あきお)

 法政大学大学院 教授

 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

 (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)(PRESIDENT Online)

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