今、日本で公開中の1本の韓国映画が、世界中で注目の的となっている。韓国の鬼才、ポン・ジュノ監督の新作「パラサイト 半地下の家族」。仏のカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを獲得し、来月発表される米アカデミー賞の作品賞に、アジア映画として初めてノミネートされるなど話題は尽きない。映画のテーマは、「半地下」と呼ばれる低家賃のアパートで暮らす貧困家庭と高級住宅街で暮らす裕福な家族とを対比した格差社会だ。「韓国の経済格差問題を描いたので、この映画は海外では理解されないと思っていたのですが…」。来日したポン・ジュノ監督は戸惑いの表情でこう語るが、仏や米国など世界の先進国にとっても、経済格差問題は見過ごせない課題であることを、今作のヒットが証明する。先進諸国は経済格差問題を克服することができるのだろうか? 来日したポン・ジュノ監督に聞いた。
コメディー要素もあるエンターテインメント大作だが、映画の根底に流れるテーマは重厚だ。サブタイトルにもあるように、韓国の低所得者層が暮らすソウルの「半地下」の住居の家族と、丘の上の豪邸で暮らす高所得層の家族とを対比させ、現在の韓国国民が直面している格差社会に真正面から斬り込んでいく。
韓国を代表する国民的スター俳優、ソン・ガンホが極貧家族の家長を演じていることも話題となった。
失業中のギテク(ソン・ガンホ)は内職をする妻と浪人中の長男、美大を目指す長女との4人暮らし。路上を歩く市民から部屋の中をのぞきこまれるような半地下に建てられたボロボロの狭い住居で極貧の生活を送っていた。ある日、長男が友人の紹介で、学歴を偽り、豪邸で暮らす女子高生の家庭教師を引き受けたことをきっかけに、ギテク一家の人生は変わり始めるが…。
元々、ギテク一家は中産階級だった。ところが、脱サラしたギテクの商売が失敗し、長男は名門ソウル大に落ち続け、家計は傾き、半地下でしか暮らせない状況に陥っていく。物語はフィクションだが、経済の危機的状況から抜け出せないでいる文在寅政権が抱える現代韓国社会の暗部の一端を赤裸々に伝える。
韓国の全人口の約半数が首都ソウルに住むが、最高学府のソウル大学を卒業しても就職先がないほど今の韓国経済は低迷している。
ソウルには、地上と地下の中間の「半地下」に建てられた貧困層用の住居が実際にあり、近年、林立する高層マンションなどの高所得者層の住民との経済格差が健在化。その格差は広まる一方だという。