高論卓説

新型コロナによる群集心理と拘禁反応 不安の連鎖乗り越える“首尾一貫感覚” (1/2ページ)

 私たちの生活に深刻な影響を与えている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、有効な治療法もなく、いつ終息するのか先行きが見えにくい状況だ。マスコミでは、感染拡大の情報が毎日伝えられ、マスクやトイレットペーパーは店頭から姿を消した。

 感染の集団発生は、国際的には災害の一つとされており、戦争などと同様に、やり場のない怒りや不安、恐怖など、こころの問題を引き起こすことが知られている(筑波大学付属病院ホームページ)。この状況は、社会心理学でいう“群集心理”が発生する可能性が高い。群集心理とは、群集の中に生まれる特殊な心理状態のことで、衝動的で興奮性が高まり、判断力や理性的思考が低下して付和雷同しやすい状態である(デジタル大辞泉)。人々がこのような不安定な状態にあるときは、流言が影響力を持つようになる。流言は、人から人へ伝えられていく過程で変容していくこともあれば、そもそも嘘の情報であるデマの場合もある。しかし、冷静な判断ができなくなった人たちは暗示にかかりやすくなっているため、未確認の情報や噂をSNS(会員制交流サイト)などで拡散することに加担したり、実際に買い占めに走ったりしてしまう。

 また、今回のように、自宅待機やイベント自粛などが要請された場合は、強制的に行動の自由を制限されるがゆえに「拘禁反応」(感情が失われる、阻害されている気持ちになるなど)の状態に陥ることがある。拘禁反応は、心が脆弱(ぜいじゃく)な人だけが陥るものではなく、誰にでも起こりうる自然な心理反応である。拘禁反応状態が長く続くと、ネガティブな情報ばかりが目に入るようになり、群集心理に巻き込まれやすくなることも考えられる。

 社会全体が不安に陥っている今こそ、「首尾一貫感覚」を紹介したい。首尾一貫感覚とは、医療社会学者のアーロン・アントノフスキー博士(1923~94年)が提唱した概念で、ナチスドイツの強制収容所から生還しながら更年期に至っても心身ともに良好な健康状態を維持していたユダヤ人女性たちが持っていた感覚である。

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