元大統領、Apple共同設立者らも賛同
――イグジット(出口)戦略も含め、さまざまな企業戦略をサポートしているのですか
アニス氏:
ペガサス・テック・ベンチャーズには面白い特徴があります。それは何かというと、コーポレートベンチャーの中で研修プログラムを提供していることです。「ペガサスと一緒に勉強していきましょう」というわけです。トヨタ自動車グループの部品大手であるアイシン精機社は2019年、実際に約100人の部課長級の職員が渡米し、ペガサス・テック・ベンチャーズの研修プログラムを受けました。ゲームなど総合エンタテインメント大手のセガサミーホールディングス社や合成繊維の大手である帝人グループもペガサスの研修プログラムに参加しています。その結果、現場レベルで意識改革ができました。
スタートアップ企業というのは、大企業の常識からみると「不思議ちゃん」に見えることもあるでしょう。オフィスには若い人が座っていますし、その考え方も尖がっています。こういったベンチャーとどのように組んでいけばいいのか。私たちは、さまざまな障壁を取り除くだけでなく、大企業の経営層から現場レベルの人に至るまで、専門外であるベンチャーについてのあらゆることをレクチャーしています。
――通信販売大手のジャパネットホールディングスと約50億円のベンチャー投資ファンド契約を結んだというリリースを見て少し驚きました。ジャパネットといえば、テレビ通販のイメージが強く、投資ファンドを立ち上げるイメージがなかったからです
アニス氏:
ジャパネットとのファンドはとても刺激的な案件になりました。テレビ通販をメインにしてきたジャパネットですが、社長兼CEOの高田旭人さんには「地域創生にもすごく貢献したい」という思いがあって、地域支援の一環で地元の長崎に世界最先端の「スマートスタジアム」を建設するプロジェクトが2019年から始まっています。2024年の開業を目指しているスタジアムを中心に、商業施設やオフィス、教育施設なども開発し、子供の教育やシニアの方の生きがいにつながるサポートを手掛けていきたということでした。その高田社長の地域に対する思いに、われわれも何とか役に立ちたいと考えています。このファンドはとてもシンボリックなことだと思っています。
――ペガサス・テック・ベンチャーズは世界最大級のグローバルピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ」を主催しています。1億円という優勝投資賞金だけでなく、グローバル企業、世界の著名人とのネットワークを築ける場としても貴重な機会となりますね
アニス氏:
いろんな方の助けもあり、2017年に世界17カ国が賛同し、スタートアップワールドカップが始まりました。各国で予選を開催し、各国のチャンピオンがシリコンバレーに集結し決勝戦が行われます。AIとロボット技術を統合した「見守りロボット」を開発している日本のベンチャーも世界チャンピオンになっています。第2回は27カ国、第3回は36カ国と参加国も年々増えています。
今年は60カ国以上で開催され、11月12日に決勝戦が行われます。Apple共同設立者の一人であるスティーブ・ウォズニアック氏やネットワーク機器世界最大手シスコ・システムズの会長、ソフトバンクのCOO(最高執行責任者)も登壇された実績があり、今年の決勝戦イベントには元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏の登壇も予定されています。どなたもスタートアップワールドカップの趣旨に賛同し、無償でイベントをサポートしていただいています。