日本への恩返しで学生100人を招待
――日本の学生をシリコンバレーに招待する「学生スカラーシッププログラム」を始めたきっかけは何だったのでしょう
アニス氏:
私は学生時代、文部科学省の奨学金を受けて日本の大学に通っていました。ここまでビジネスが広がったのは日本のおかげだと思っています。その恩返しをしたいという思いから、日本の学生100人を招待することにしました。それが学生スカラーシッププログラムです。シリコンバレーではワークショップも行われます。プログラムに参加した学生の中から、今後の日本をリードする経営者が必ず出てくると思っています。
今年は新型コロナウイルスの影響で100人規模の招待は難しいかもしれませんが、25~30人ほどを招くつもりです。きっと大きな刺激を受ける機会になるはずです。グローバルな視野を持つ人が増えてくると思っています。このプログラムがうまくいけば、ほかの国にも広げていこうと考えています。
――かつて「Japan as No.1」と言われた日本ですが、残念ながら情報通信産業分野では後れを取ることになりました。日本のスタートアップの現状をどう見ていますか
アニス氏:
日本のベンチャーは決して弱くなく、優秀な起業家たちがそろっていると考えています。グローバルで戦えるベンチャーも少なくありません。では何が課題かと言えば、絶対数が少ないということです。
日本の起業家は真面目で頑張り屋さんです。グローバルな起業家は必ずしもそうではありません。時には1のものを5にも10にも大きく言うこともあるでしょう。日本の起業家は正直で謙虚なので、われわれ投資家としては投資しやすいですね。
私は2000年に東京工業大学を卒業し、IBM などで技術開発に携わったエンジニアでした。東工大の学生は、卒業後にどこの大企業で働くかという選択で忙しくしていましたが、同じ時期にアメリカの名門大学を出た友人で大企業に就職した人数は非常に少なかったです。みんな自分で大きな夢をみています。そういう違いがあります。