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「ありえないところに大行列」 シャトレーゼを大成功に導いた意外な出店場所 (1/3ページ)

 シャトレーゼの店舗は郊外が中心だ。その原点は、工場直売システムを始めた店舗にあった。甲府駅から4~5キロ、田畑の中に作った実験店「新々平和通り店」だ。なぜ郊外を選んだのか。会長の齊藤寛さんが解説する--。※本稿は、齊藤寛『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

 工場火災、新工場の不調、人材不足という不運

 主力工場の火災、新工場の不調、人材不足と不運が続く中、シャトレーゼの商品が並んでいた小売店の棚は、他社の製品に置き換わっていました。厳しい競争が続く業界で、満足に商品が届けられなかったのですから、仕方がありません。

 さて、どうするか。

 営業の要だった弟は、もういません。でも僕は、頭を下げて注文をとるのは大嫌いなんです。

 売り場を持たないメーカーは、立場が弱い。卸す先によっては、「いやならやめてもらっていいよ」と言わんばかりのところもあります。「取引を続けたかったら、わかっているよね」という無言の圧力で、販売協力費という名目の寄付金を強要されたり、約500万円の高級腕時計を買わされたりしたこともありました。

 何よりも悔しかったのは、おいしさは二の次で安さを優先させようとする姿勢です。お値打ち価格で提供するのは悪いことではありませんが、それはおいしさあってのことです。安かろう悪かろうでは、まったくお客様をバカにしています。

 「売りに行くのではなくて買いに来てもらおう」

 シュークリームに続いて力を入れた商品は、ロールケーキです。シャトレーゼのロールケーキは、鉄板の上に直接スポンジ生地をのせて焼くのではなく、鉄板の上に紙を敷いて、その上に生地を流して焼くやり方に改良しました。そうすることで、スポンジが非常にソフトになるのです。

 それを小売店に持っていったところ、「これはうまい!」ということで商談成立。一躍、シャトレーゼのロールケーキは人気商品になりました。

 ところが、「ロールケーキというのは売れるものだ」と味をしめたのでしょうね。もっと安くできないかと要求され、質を落とすわけにはいかないからと断ったら、安い他社製品に置き換えられてしまったのです。

 シャトレーゼの商品がおいしくてロールケーキが人気になったのに、安いというだけで他社に乗り換えるなんて、悔しいじゃないですか。

 そういう苦い経験もありましたので、このピンチを機に、「ようし! だったら、売りに行くのではなくて買いに来てもらおう」と頭を切り替えたのです。

 「100円アイスなら66円」卸値価格で販売

 まずは試験的に、アイスを売り出すことにしました。どうせ20年間利益の出なかった商品ですから、それ以上悪くなることはありません。甲府駅と会社を結ぶ中間ぐらいの場所にプレハブの店(実験店「新々平和通り店」)を作って、アイスの冷蔵ケースをダーッと10台ぐらい並べました。

 通常はメーカーが問屋に卸し、問屋が小売店に卸すわけですが、直接売るならその分安くしても、十分利益は出るわけです。ですから、売値は卸す値段と同じ34パーセント引きにしました。100円のアイスなら66円です。

 売れるとは思っていましたが、想像以上なんてものではありません。甲府駅から4~5キロメートル離れ、周囲が田畑ばかりのところに「どこから人がわいてくるのかな」と思うほどの行列です。「これはいける!」という手応えがありました。

 そこで、すぐに千葉県柏市にあった子会社に「スーパーの卸しなんてやっている場合じゃないぞ。すぐに店を作ろう!」と連絡して、国道16号沿いに直売の店舗を出しました。山梨とはマーケットの規模が違いますから、予想通り輪をかけての大繁盛です。

 工場直売システムで、年商100億円を達成

 全国的にも話題になって、大手メーカーのみなさんも見学に来られました。しかし、スーパー等の販路を持っている大手メーカーのみなさんは、「工場直売をやるなら、お宅の商品はもう売りません」と言われると困りますから、どなたも真似はできなかったようですね。販路を失うというピンチだったからこその大逆転です。

 工場直売システムで、夏はアイス、冬はシュークリームやロールケーキ、100円ケーキという体制で売れに売れ、出店の申し込みも後を絶たず、あっという間に年商100億円を達成しました。中道工場だけでは供給が追いつかなくなり、白州(はくしゅう)名水で知られる北杜(ほくと)市に、白州工場を建設することになったのです。

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