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街中を自動運転バスが走る…運行開始から1年「駅がない町」に見た地方創生の未来図 (3/3ページ)

SankeiBiz編集部
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 肝心の交通面でも17年2月に全線が開通した圏央道茨城区間を活用した境町と東京駅を約1時間20分で結ぶ高速バスの運行が今年7月から始まった。有名校への進学を目指す子供たちは埼玉県内の学校を選ぶことが多かったが、これからは東京の学校も選択肢に入れられるとの期待も大きい。

 自動運転バスのルート沿いで自営業を営む女性(74)は「昔はにぎわっていたこのバス通りもシャッターを閉めている店が多くなって、さびれてきた。でも今は町がいろいろと頑張ってくれている」と、良い方向への変化を感じている。

 ふるさと納税をフル活用

 もちろんこうした「境町モデル」にも財源の裏付けが必要だ。自動運転バス事業単体では採算がとれないとしても、町全体の財政状態は健全に保たねばならない。

 境町は課題克服に向けてふるさと納税をフル活用している。境町の一般会計決算での歳入規模は20年度で216億円。このうち41億円程度はふるさと納税に基づく寄付金だ。こうした取り組みの結果、境町の地方債残高は年々減少しており、20年度の残高(151億円)は、ピークだった13年度から20億円以上少ない。

 ただ、ふるさと納税は収入が安定しないという難点もある。制度自体に対しても各自治体が財源集めのために返礼品の水準を競い合う構図を問題視する声が根強い。このため橋本氏は「ふるさと納税が続いている間に(投資)資金を回収する仕組み」を作るとし、自動運転バスの車体や社内に広告を出してもらうなどの構想を描く。

 無人の自動運転も視野

 境町は今後、住民のニーズを見極めながら、第5期ルートまでの増設を予定。ルート選びの際には、ボードリーと同じソフトバンクのグループ会社で携帯電話の位置情報に基づいた人流分析を行っている「Agoop(アグープ)」の協力を得て、人出の多い場所や時間帯の洗い出し、他の車の移動スピードの分析といった作業も行う。

 また、政府で進められている法律改正に向けた検討の動向も踏まえ、車内のオペレーターをなくした無人自動運転バスの走行も視野に入れている。運行管理者に対する審査や安全を担保するための仕組みなどの制度が固まれば、無人運転の舞台が整い、コスト削減にもつながると見込む。

 境町の自動運転バスは構想着手から約2年。サービス開始から約1年の時間を経て、子供からお年寄りまで多くの住民に受け入れられた。「近未来が身近に感じられる町」で生まれ育った子供たちが大人になるころには、町の中に次の未来が姿を現しているかもしれない。

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