省エネ新型車両、収益多角化の切り札 鉄道総研など、超電導材や蓄電池活用
環境に優しい乗り物の優等生である鉄道が進化している。鉄道総合技術研究所は大容量の送電が可能なケーブルの開発を進めるほか、鉄道車両メーカーも相次ぎ省エネ性能に優れた新型車両の開発に取り組んでいる。
鉄道総研が5~10年程度先の実用化を目指して開発しているのが「超電導き電ケーブル」。電気抵抗がゼロの超電導材を使うため、電圧降下なく大容量の電気を車両に送り込める。
1本のケーブルの中に、ビスマス系やレアアース系の高温超電導材と冷却用の液体窒素を充填(じゅうてん)する。
電気抵抗がなくなる超電導状態は、ニオブチタンなどではマイナス269℃で起きるといわれるが、日本では調達が難しい液体ヘリウムを冷媒に使う必要があった。高温超電導材は安価な液体窒素を冷媒に使えるため、マイナス196℃で超電導状態になるという。
2013年7月、東京都国立市の鉄道総研でケーブルの長さ31メートルで実験を開始。今年7月には同310メートルでの実験に成功した。
関東から中国、四国地方にかけてのJRや私鉄の多くは直流で電車を動かす。この場合、発電所から送られる交流の電気を直流に変える変電所を数キロ間隔で設置する必要がある。変電所間の距離が長いと、電線の電気抵抗による電圧降下が大きくなり、列車が走れなくなる。
運行安定で増便可能
電気抵抗のない超電導き電ケーブルを架線に敷設すれば、変電所から遠く離れた場所へも一定の電圧で電気が送れるようになる。開発を進める富田優・研究開発推進室担当部長兼超電導応用研究室長は「列車運行の安定化で、さらなる列車の増便の可能性も期待され、利用者の利便性が上がる」と話す。
鉄道による省エネ技術の一つに、ブレーキをかけたときに発電したモーターの電気を架線に戻す回生ブレーキがある。ただ近くに、別に走行する電車がないと、その電気が無駄になる回生失効と呼ばれる状態になる。超電導き電ケーブルを使えば、回生失効が少なくなる。
鉄道各社にとって、変電所の設備更新は多額のコストがかかる。長距離に安定して送電できるようになれば、変電所の数を減らすことができる。空いた変電所の土地の有効活用にもつなげられるため、少子化で将来の輸送需要減が避けられない鉄道各社にとって収益多角化の切り札となりそうだ。
一方、蓄電池を使った鉄道車両の開発が進み、地域の足として活躍が始まった。JR東日本が開発した蓄電池駆動電車「ACCUM」は、電化区間ではパンタグラフをあげて架線からの電力で走行しながら蓄電池に充電。非電化区間では蓄電池の電力で走る。
排ガスや騒音削減
非電化区間で走る気動車(ディーゼル車)は、電車よりエネルギー効率が悪く、排ガスや騒音の面でも課題があった。ACCUMは、従来型気動車より走行時の二酸化炭素(CO2)発生量を約60%減らせる。気動車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)も全く発生しない。
車両の床下には、高性能な蓄電池のほか、空調用の電源、モーターやその制御装置などが組み込まれている。3月から栃木県のJR烏山線で毎日3往復運転されている。JR東日本は「車両の増備なども考えたい」(長谷部和則・車両技術センター課長)としている。
近畿車両も02年から、環境に優しく省エネルギー時代に対応できる鉄道車両の研究開発を続けている。10年にGSユアサと共同開発した車両駆動用蓄電池システムを搭載してリチウムイオン蓄電池のみで走行する超低床路面電車「ameriTRAM」を北米で走らせた。外部充電装置としてパンタグラフを搭載しており、電化、非電化を問わず全ての路線で走ることができる。
蓄電池路面電車の開発ノウハウを生かし、12年に長距離の非電化路線を外部充電することなく走行する自己充電型バッテリー電車「SmartBEST」を完成させた。従来の気動車に比べ半分以下の小さなエンジン発電機で蓄電池に充電し走行することができる。堀江富士雄取締役は「これまで開発した技術を生かして、さらなる省エネルギー車両を開発していく」と話している。(松村信仁)
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