南シナ海問題 中国の覇権主義を阻む日本の「関与」

視点

 □産経新聞論説委員・榊原智

 「我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を懸念するとともに、(略)現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威嚇的、威圧的又は挑発的な一方的行動に対し、強い反対を表明する」

 広島における先進7カ国(G7)外相会合が11日に採択した「海洋安全保障に関するG7外相声明」の一節だ。

 誰が読んでも、東シナ海で尖閣諸島(沖縄県石垣市)の奪取を狙い、南シナ海で人工島の軍事化を進めている中国のことを指しているとわかる。

 日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダとEU(欧州連合)がそろって、中国の傍若無人な行動に「強い反対」を唱えた意義は大きい。

 国際ルールをしばしば無視する中国といえども、国際的評判は気にせざるを得ない。中国外務省報道官は12日、「強烈な不満」を表明し、「G7は海洋問題を騒ぎ立て地域の対立をあおるな」と要求した。

 さらに13日には、駐北京のG7各国の大使館幹部を呼び出して反論を行った。このうち日本だけ、大使館トップの大使を呼び出した。声明のとりまとめに、日本が主導的役割を果たしたからだろう。

 中国は、南シナ海や東シナ海をめぐって最近の日本が示す行動に、強く反発している。

 南シナ海をめぐる、自衛隊と米、オーストラリア、フィリピン、ベトナムなどの国々の軍との安全保障協力も気になって仕方がないらしい。

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 中国の程永華駐日大使は3月、中国英字紙上で、自衛隊を念頭に「日本は南シナ海で緊張を高めるべきではない」と反発した。中国外務省の報道官は、海自潜水艦のフィリピン寄港について「日本は第二次大戦中に中国の南沙諸島を不法に占領した。日本が軍事面で南シナ海に戻るたくらみを高度に警戒している」と語った。

 日本は、第二次大戦前から領有していた南沙諸島(当時は新南群島と呼称)をサンフランシスコ平和条約で放棄させられたのだから、中国外務省報道官の発言は事実に反するプロパガンダにすぎない。

 南シナ海に面するフィリピンのスービック湾には先日、海上自衛隊の潜水艦と護衛艦が寄港し、フィリピン側から大歓迎された。

 空軍が弱いフィリピンは、現状では南沙諸島の中国の動きを見張ることができない。そこで、哨戒用として、海自が使っていたTC-90練習機を貸与する準備も進んでいる。

 昨年は、海自護衛艦やP3C哨戒機がフィリピン軍と南シナ海で救難訓練などを行った。海自P3Cは、スプラトリー諸島(南沙諸島)に面するパラワン島の飛行場へ進出し、フィリピン軍と、南シナ海での救難訓練を実施したが、同時に、米軍が同じ飛行場へ進出し、フィリピン軍と合同演習を行っている。日米比の自衛隊・軍の密接な関係を、中国に見せる効果があった。

 日本は、ベトナムとの関係も急速に深めている。フィリピン寄港の次に、海自護衛艦2隻は潜水艦と別れ、ベトナムの要衝カムラン湾を訪問し、やはり大歓迎された。

 4月17日から19日にかけては、海上自衛隊のヘリ空母「いせ」が南シナ海の海空域で、米豪海軍と、戦術行動や通信訓練の共同演習を行った。日本が「航行の自由作戦」を支持しているのはいうまでもない。

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 日本の外交や、自衛隊による関係国との安全保障協力が取るに足らないものであれば、中国は無視するだけだ。反発しているということはすなわち、「効いている」ことを意味する。沿岸国のフィリピン、ベトナムを後押しし、米国などと連携する日本の南シナ海への積極的な関与は、中国の覇権主義を阻む方向に作用しているのだ。

 南シナ海を中国の覇権主義が支配すれば、日本などアジア諸国、それに米国の安全と繁栄はひどく損なわれる。

 日本は尖閣防衛だけをしていればよいというのは愚見といえる。南シナ海を料理すれば、中国は勢いを増して侵略の手を伸ばしてくるからだ。南シナ海が「自由で平和な海」であるために日本が力を尽くすことこそ国益にかなっている。