なぜ韓国のスポーツは日本よりも強いのか? 貫かれるエリート主義
【スポーツi.】フリーランスプランナー・今昌司
昨年のプロゴルフ女子ツアーは賞金ランキング上位5位までを海外勢が独占、そのうちに韓国選手が4人もいた。野球では国際大会「プレミア12」で、韓国が日本を準決勝で打ち砕き、見事に初代チャンピオンの座に就いた。ここ最近、オリンピックを筆頭に、スポーツの国際舞台ではあらゆる場面で韓国は日本の前に立ちはだかり、日本は常に後塵を拝している。
◆一握りの選手育成
なぜ韓国は強いのか。2020年東京五輪を控え、日本でも若手選手の育成は叫ばれているが、開幕間近のリオ五輪、そして18年の平昌冬季五輪で、日本は韓国に勝ることができるのか。若手世代の選手育成の点においても興味は尽きない。
人口は日本の約4割、少子高齢化も超が付くレベルで進んでいることは日本と変わらない。もちろん、小・中・高校の数も人口に比例して同等レベルにある。しかし、例えば高校野球では、韓国に野球チームを持つ高校は僅かに50校程度しかないが、日本では約4000校が春と夏の甲子園を目指して全国各地で活動している。野球に限らず、各スポーツの競技人口を比較してみても、その違いはまさに桁が違うのである。
各競技における結果の違いは、競技人口の差というより、韓国のスポーツや体育に関する制度にある。
韓国は将来的に国家代表やプロ選手を目指す一握りのエリートのため、国策としてスポーツ強化、育成を図っている。その割合は、1%。99%の子供たちは五輪やプロ選手を目指してしのぎを削る世界とは全く別の世界にいるのだ。
韓国では儒教の教えが根強く残り、スポーツよりも学問が重視される傾向にあるという。逆に言えば、スポーツに対する理解は希薄だ。スポーツや体育の環境は3つに分けられる。
一つは、1%のエリートのためにある学校運動部。これは日本の部活動と違い、体育中学、体育高校と呼ばれるエリート養成のための部活動である。ただし、その数は中・高合わせても30に満たない。全国各地で才能を見いだされた子供たちは、こうした専門的な環境の中で能力強化に取り組んでいる。
一方、一般の子供たちがスポーツを楽しむ機会も設けられている。学校スポーツクラブと呼ばれるものだ。日本流に解釈するとサークル活動とも言え、運動機会やスポーツを楽しむ場としての課外活動である。ただし、学校スポーツクラブの対象は日本の部活動とは全く異なり、将来トップアスリートを目指す子供たちではない。
さらに、日本との大きな違いであり、子供たちの体力低下を招く要因として問題視されている学校体育がある。超が付く受験大国である韓国では、体育の時間を自習に充てるなど、体育教育自体が軽視されている。このように、近年、国際舞台で活躍が際立つ韓国のスポーツ事情は、トップレベルと底辺との間に大きな格差がある。
◆巨大な訓練施設
国家代表レベルの才能を見いだされた子供たちは、国が運営するナショナルトレーニングセンター(NTC)に送り込まれ、寄宿しながら強化に取り組んでいる。現在3カ所あり、中でも12年開業の最新NTC、鎮川(チンチョン)NTCの総敷地面積は日本のNTCの約16倍で、現在も各種施設の建設が続いている。泰陵(テルン)NTCの老朽化によって新設された施設だが、泰陵NTCの敷地面積が約30万平方メートルなのを踏まえれば、鎮川NTCの巨大さがうかがい知れる。ちなみに、泰陵NTCは日本のNTC建設の際のベンチマークとなった施設だが、韓国ではその5倍以上の施設を整えようとしている。スポーツ強化の環境はますます格差が開いている。
日本では日本オリンピック委員会(JOC)と競技団体が共同で、NTCを拠点としたエリートアカデミーを設けているが、対象は昨年新たに加わった2競技を含め、わずか7競技のみ。その他の競技は強化合宿は行えても、年間を通した寄宿制の強化策を採ることはできない。
施設面のみを参考にするのではなく、結果を伴う強化・育成体制を確立すること、そして何よりも、一握りのエリート養成こそが20年に向けて求められているように思う。
【プロフィル】今昌司
こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。13年より2年間は帝京大経済学部経営学科非常勤講師も務める。ブログは(http:www.plus-blog.sportsnavi.com/umekichihouse)
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