パキスタンのHIV感染増加率、年17.6% 問われる政府の対策
パキスタンは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の新規感染が増加している。米ワシントン大学の調査によると、パキスタンの年間新規感染者数は2005年の8360人から15年は4万5990人となった。年平均増加率は17.6%となり、調査対象の124カ国・地域で最も高かったという。現地紙エクスプレス・トリビューンなどが報じた。
同国は、HIV感染とエイズ(後天性免疫不全症候群)が原因の死亡者数も05年の350人から15年は1480人となり、年平均14.4%の勢いで増加した。調査対象のうち新規感染が増加しているのは74カ国・地域。アジアではフィリピンやカンボジアなどが増加傾向にあり、パキスタンは増加率がもっとも高かった。
一方で、パキスタンは感染者に対する効果的な治療の普及も進んでいない。HIV感染者のエイズ発症を遅らせるには複数の強力な抗ウイルス剤を使用するART(多剤併用療法)が有効とされ、世界的にみると3900万人の感染者のうち41%がARTを受けているという。
しかし、パキスタンはARTを受けている感染者の割合が6%程度で、アフガニスタンやマダガスカルなどと並んで世界最低水準だ。このため専門家からは、パキスタン政府のこの問題に対する取り組みが失敗しているとの声が上がっている。
医療関係の専門家は、パキスタン国内の感染のおもな要因は注射器の使い回しと輸血だと指摘。現状の感染者数はアフリカ諸国よりは少なく、政府が今から正しい対策を講じれば爆発的な流行は避けられると述べた。
パキスタン国内の別の調査によると、感染者数は9万4000人で、南アジア地域ではインドに次いで2番目に多い。同国内ではHIVやエイズの話題がタブー視されている面もあり、症状や原因に関する無知が結果的に感染増につながっているとの指摘もある。感染増加の沈静化に向け、政府が果たすべき役割が大きくなっているといえそうだ。(ニューデリー支局)
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