とはいえ、“祭り”はたぶん踊った者の勝ちだろう。だが、にぎやかな雰囲気の中で新刊を手に入れた人々は、さっそく本を開いて、「多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた」という陰鬱(いんうつ)な冒頭の文と出合う。その「落差」は、数ある行列の中でもハルキストだけが経験することかもしれない。
商魂もたくましく…
同業者ながら感心したのが朝日新聞デジタルだ。発売前日に「文化の専門記者が徹夜で読んで書いたレビューをいち早く朝に配信」とツイッターで告知し、12日午前7時台にアップした。しかし、無料で読めるのは冒頭だけで、続きは「有料ページ」へと誘導。このしたたかさは、見習うべきだろうか。
一方、こんな指摘もツイッターにはあった。「『村上春樹作品はどうしてこんなに話題になるんでしょうか』という質問を(マスコミは)したがるわけだが、『そりゃ、あなたたちマスコミが大騒ぎするからでしょうよ』以外答えようがない」