顔の骨は手足の骨などに比べ形状が複雑。患者本人の別の部位から移植する場合でも、欠落した顔の骨を正確に再現するには手作業で数時間かかる場合もある。
新開発の人口骨は、欠落部分の骨のCT画像データを撮影し、その画像を3Dプリンターに取り込めば、数時間で作製できる。煩雑な手作業がなくなり、一度に大量生産できるメリットもある。
東大病院によると、事故の外傷、がん切除や発育不全などで、ほおやあごの骨が欠けて、骨の移植を希望する患者は国内で年間数千人規模に上ると推計される。一般的に、患者の肋骨(ろっこつ)や腰から移植するケースが多いが、移植元の骨が変形したり、神経がまひしたりといった危険性も指摘される。とくに子供の場合、移植可能な骨の量に限界がある。
また、手足の骨や背骨などの一部が欠けると、セラミック製の人工骨を埋め込む手術が増えているが、複雑形状の顔の骨は再現しにくいという。
今回の人工骨は、実際の骨の成分と同じ「α型リン酸三カルシウム」を原料にしていることから、手術後2~3年で自然に自分の骨と同化する。