産経新聞のインタビューに答える小野田寛郎さん=2008年6月、東京・大手町(中井誠撮影)【拡大】
帰還後、小野田さんはブラジルへ渡り、成田空港よりも広い牧場経営に成功した。なぜ、そこまで戦い続けるのか。
「自然が好きなんですよ。その気になればどこでも食っていけますから」
あの牧場は、小野田さんの意地の証ではないか。「自分は戦争屋じゃない」との思いもあっただろう。
あの日と同じように、背筋を伸ばし、謙虚でつつましく歩み続けてきた小野田さん。風化しない生粋の人間を、また一人、失ってしまった。(当時の取材キャップ・産経新聞元常務 山下幸秀)